2015 Fiscal Year Annual Research Report
角膜神経障害に伴う有害事象の時間生物学的予防法の確立
Project/Area Number |
26861456
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
楠瀬 直喜 大分大学, 医学部, 特任助教 (10725964)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 体内時計 / 時計遺伝子 / マイトマイシンC / 神経障害 / グルココルチコイド |
Outline of Annual Research Achievements |
緑内障や翼状片手術に併用されるマイトマイシンC (MMC)は、角膜神経障害の原因となる。一方、時計遺伝子の発現変化にともなうリズム障害が、薬物の副作用発現に寄与すると指摘されている。本研究では、MMCの時計遺伝子発現におよぼす影響を明らかにすることを目的に実験を行なった。 実験にはマウス線維芽細胞株NIH3T3を用い、mRNAの発現量をマイクロアレイまたはreal-time PCRによって測定した。 NIH3T3に対して、MMC (40 μg/mL)を24時間処置し、時計遺伝子のmRNAの発現量を測定した。その結果、MMC処置群においてBmal1 mRNAの有意な発現低下が確認された。一方、Perod1、DbpおよびRev-erbα mRNAの発現量はMMC処置群において有意に上昇した。また、mRNAの発現変化をマイクロアレイによって網羅的に解析した結果、グルココルチコイド受容体の発現が3時間のMMC処置によって変化することが明らかとなった。また、3時間のMMC処置によって核内グルココルチコイド受容体の蓄積量が低下し、デキサメタゾン刺激によるPer1の発現誘導が阻害された。さらに、MMCを3時間前処置した細胞では、デキサメタゾン刺激によるPer2::Lucの発現振動が認められなかった。 以上の結果から、MMCはグルココルチコイド受容体の発現低下を介して線維芽細胞における体内時計機構を変化させる可能性が示唆された。過去の報告では、神経障害を察知した線維芽細胞が、BDNF等の神経栄養因子放出することで神経保護作用を示すことが示されている。一方、BDNFの発現には概日リズムが認められ、その発現が体内時計によって制御されている可能性が示されている。すなわち、MMCによる線維芽細胞におけるリズム障害が、神経保護因子の発現変容を介して神経障害を悪化させる可能性が考えられる。
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