2014 Fiscal Year Research-status Report
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26861462
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
永田 真帆 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (40614102)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | R-spondin1 / 角膜 / 創傷治癒 / 細胞間接着 / 細胞増殖 / 幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
RSPO1遺伝子欠損マウスモデルを用いた角膜における機能解析 1. 形態学的・組織学的検討 KOマウスの形態学的特徴を継時的に観察した結果、生後6か月で角膜混濁を生じ徐々に増強することが確認された。この角膜にフルオレセイン染色を行うとdelayed stainingが生じ、角膜上皮の透過性亢進が明らかとなった。 2.細胞生物学的検討 生後1年のマウス角膜を組織学的検討した結果、混濁の原因は角膜上皮下の沈着物であり、さらにカルシウム染色により、沈着部にカルシウム塩を含むことが判明した。細胞骨格マーカー(ケラチン等)、細胞間接着分子(ZO1等)、基底膜構成分子(ラミニン等)の発現を免疫組織化学的に調べた結果、細胞骨格マーカーの異常は認めず、角膜上皮としてのキャラクターを維持していると考えられた。角膜上皮透過性亢進所見から、細胞間接着分子の異常が予想されたが、やはり発現低下していた。基底膜は肥厚し、基底膜が沈着部位であると考える。角膜混濁発生の機序として、角膜上皮接着分子が破綻し、涙液が基底膜まで移行して涙液中のカルシウムがpH変化などによりハイドロキシアパタイトのような結晶構造となり沈着したことが考えられる。 3.角膜創傷モデルによるRSPO1のin vivo機能解析 WTマウスとKOマウスに角膜創傷を作成し創傷治癒を比較したところ、KOマウスで有意に角膜創傷治癒が遅延し、RSPO1が創傷治癒に寄与している可能性が示唆された。WTマウスの角膜創傷モデルで経時的に組織を採取し、免疫組織化学的手法でRSPO1、細胞増殖マーカーの発現を確認した。その結果、RSPO1は創傷へmigrateしている上皮では発現低下し、細胞増殖・再構築の段階で再発現することが確認された。RSPO1は上皮再構築に関与している可能性が示唆され、これが創傷治癒促進作用の理由のひとつであると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RSPO1はメスの性腺形成に必須であり、KOメスは妊娠不可能、ヘテロメスは乳腺発達障害のため授乳不能で育児放棄する。そのため譲り受けたヘテロマウスにより系統維持とKOマウス産出を行う。KO仔マウスを得るためには、ヘテロ同志を交配し1/4の確率でKO仔マウスを得るが、出産したメスはその後育児しない。そのため、WTマウスを同時期に交配し、産後すぐにヘテロマウスの仔をWTマウスケージに移しWTマウスに育児させた。しかし、出産時期がずれることも多く、同時期に出産しても産後すぐにタイミングよく仔マウスを移動することが困難で、タイミングよく移動してもなかなか別マウスの仔を育児するに至らない。また、WTマウスが出産した仔マウスと区別不能でgenotype PCRが非効率である。そこで、多産系統(ICR)マウスを同時期に交配し、同ケージで同時期に出産させ、両系統の仔マウスをICRマウスに育児させた。この方法により、ICRマウスが匂いの違いで育児放棄することも減り、ヘテロの出産後すぐにICRマウスから授乳可能となった。仔マウスの色とサイズの違いが明らかであり、同ケージ中でもヘテロマウスから産まれた仔マウスのみを選別しgenotype PCRを行うことができ、効率よくKOマウスを選出することが可能となった。現在は順調にKOマウスを得ている。 このような事情から、当初KOマウス数の確保が困難だったが、その間は少ないKOマウスについての種々の実験や、KOマウス以外の実験(WTマウスの創傷実験等)を行うことで、順調に実験結果を出し学会発表も行うことができた。また、KOマウスの長期経過観察と組織学的実験の中で数々の発見があり、RSPO1の機能がさらに明らかとなってきた。新たな知見が蓄積されるにつれ、今後行うべき実験や課題がわかってきた。総合すると、順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
当初RSPO1は種々の組織幹細胞マーカーであるLGR5のリガンドであることから、幹細胞関連の役割を想定し実験開始した。昨年度の結果では、RSPO1の創傷治癒促進効果が明らかとなり、とくに再構築期の増殖・分化への関連が示唆された。一方、KOマウスの長期経過観察では徐々に角膜混濁が増強し、細胞間接着分子の破綻によるカルシウム沈着が観察され、RSPO1が角膜上皮分化過程での細胞間接着構成に関与すると考えられた。 したがって、今年度の課題は、RSPO1の角膜における増殖・分化に関する機能解析となる。 1.形態学的・組織学的検討 RSPO1-KOマウスの組織を採取し、微細構造(細胞間接着等)について電子顕微鏡を用いて検討する。 2.分子生物学的検討 RSPO1-KOマウス角膜上皮の細胞間接着関連分子(ZO-1、クローディン、オクルーディン、デスモプラキン等)について免疫組織化学的検討を行い、どの細胞間接着が破綻しているのかを調べる。RSPO1の創傷治癒促進作用に関連して、増殖、アポトーシス、炎症関連の分子についても免疫組織化学的検討をすすめる。 3.角膜創傷モデルによるRSPO1のin vivo機能解析 KOマウスの角膜に創傷を作成し、継時的に組織を採取し、組織修復過程におけるWTマウスとの違いについて検討する。具体的には、増殖、アポトーシス、炎症関連分子について免疫組織化学的検討をすすめる。 4.RSPO1のin vitro機能解析 RSPO1-KOマウスより採取した角膜上皮細胞を培養、重層化させ、角膜上皮層上/下の電気抵抗を測定し、WTマウスと比較することで、培養角膜上皮の透過性を調べる。同様に3次元構築したマウスおよびヒト角膜上皮にレトロウイルスベクターを用いてRSPO1を遺伝子導入し、マウスおよびヒト角膜上皮のin vitroにおける機能解析を行う。
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Research Products
(3 results)