2014 Fiscal Year Research-status Report
加齢黄斑変性における網膜色素上皮の機能的相転移の解析とエピジェネティックな制御
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26861464
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
畑中 宏樹 京都府立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (80368050)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 網膜色素上皮 / 線維性変化 / エピジェネティック |
Outline of Annual Research Achievements |
加齢黄斑変性(AMD)は今なお視力予後の不良な疾患である。本疾患の予後を左右する因子として網膜色素上皮(RPE)を含む後眼部間質における線維化が挙げられる。この進行性病態の首座をRPEにおける細胞老化-上皮間葉系移行(EMT)-線維化という「細胞の機能的相転移」として捉え、新しい治療概念を創出する。まずRPE線維化in vitroモデルとして霊長類RPE初代培養、ヒトRPE細胞株を、線維化誘導物質としてTGFβ、TNFαを用いた。その結果RPEの機能関連タンパクであるZO-1, Na+K+-ATPase, RPE65の発現減少、αSMA, fibronectin, collagen, phalloidinなどの線維化関連タンパクの発現増加を認め、線維化in vitroモデルが作成できた。さらに予備的検討においてスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)やさらに強力なHDAC阻害薬であるOBP-801を阻害薬として用いたところ線維性変化の抑制が認められた。次に「相転移」制御において遺伝子発現、miRNAによる遺伝子機能制御レベルで網羅的に解析を行った。その結果TGFβ添加によりコントロールと比較してANGPTL4など4倍以上の増加、FGF18などの1/4以下の減少が認められ、TNFα添加ではIL-8など8倍以上の増加、BMP6など1/4以下の減少が認められた。またmiRNAにおいてはmiR4460, miR4754などのup regulate、miR651-3p, miR4716-5pのdown regulationが検出された。以上からRPEへの細胞ストレスなどで惹起される細胞相転移においてEMT抑制、MET促進、細胞の分化促進、p27抑制、細胞周期促進、枯死抑制など遺伝子発現を制御するmiRNAが選択的にup/down regulateされている事が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RPE線維化モデルの実験系を確立することができ、また予備的実験でもターゲットとするHDAC阻害薬の線維化抑制効果が確認され、次年度の研究計画への準備が整った。また「相転移」における遺伝子、miRNAレベルでの網羅的解析の結果も得られていることから申請者の研究計画は順調に進行していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
得られた実験系を用いてHDAC阻害薬であるSAHA, OBP-801、肝組織線維化抑制効果を持つSAG(S-ally-glutathione)を投与し線維性変化の抑制効果を多角的に(位相差顕微鏡、免疫染色、Western blotting、PCR)検証する。さらにHDAC阻害薬においてはアセチル化/脱アセチル化の測定を行う事でエピジェネティックな調節機構の正常化が認められるかを検証し、各種線維化抑制物質との関連付けを行い、新たな治療法の開発を最終目的として研究を進めていく。
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Causes of Carryover |
ヒトRPE細胞株を購入後、継代培養が順調に行われ、新たな細胞購入や消耗品購入の支出が抑えられたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
線維化誘導剤による線維性変化やその抑制のメカニズムの検索のため、広い範囲で種々のシグナルの動きを検討する必要がありやや網羅的な検証となる。そのためそれら抗体購入にかかる費用が27年度予定よりも増加する可能性が高く、それに充てる予定である。
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