2014 Fiscal Year Research-status Report
ES/iPS細胞由来網膜神経組織の移植による視機能再生の機能解析
Project/Area Number |
26861478
|
Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
金子 潤 独立行政法人理化学研究所, 多細胞システム形成研究センター, 研究員 (10612153)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 網膜移植 / ES/iPS細胞 / 網膜色素変性 / 再生医療 / 多点電極アレイ / カルシウムイメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、マウスおよびヒト多能性幹細胞から分化誘導した網膜神経組織を網膜変性モデルマウスの網膜下に移植した後、移植による新たな神経回路形成および変性網膜の光応答機能の回復を電気生理学的手法・カルシウムイメージングによって詳細に解析することを目的とする。先行研究により、移植後の網膜片は網膜下において形態的成熟・特異的分子マーカーの発現・ホスト網膜とのシナプス再形成が起こることが示されている。一方、機能的な成熟に関しては、一般的な解析手法であるERGでは検出感度に限界があるため、より高感度な多点電極アレイ(MEA)により電気生理的解析を行った。その結果、移植部の視細胞由来と考えられるa-waveが検出され、マウスES/iPS細胞由来の移植網膜は機能的にも成熟していると考えられる。また白色LEDによる光刺激によって移植部直下の網膜神経節細胞から光応答が計測され、各種グルタミン酸受容体阻害剤によって光応答が阻害されることを確認した。さらに移植部周辺においては、変性網膜にみられる神経節細胞の異常発火が抑制されていたことから、移植による神経保護効果が示唆された。 また網膜移植による光応答の回復をハイスループットに検出するため、多光子顕微鏡によるカルシウムイメージング用セットアップを立ち上げた。現在、網膜神経節細胞特異的にGCaMP3を発現する網膜変性マウス(rd1、rd10)を作成中であり、網膜移植後に機能評価を行う。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
機能解析の手法としてMEAの他にパッチクランプ実験を予定していたが、MEAの結果を鑑み、機能的シナプス形成率の向上のため移植条件をさらに検討する必要が出てきた。そこでスループットの良いカルシウムイメージングで解析するように方針を転換した。カルシウムイメージング用のGCaMP3マウスは現在作成中であり、今年度前半にも解析を行う予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、網膜変性モデル動物へヒトES/iPS細胞由来の神経性網膜シートを移植し、MEAを用いて電気生理的機能解析を行う。移植のホストとなる網膜変性モデルとしては、視細胞変性を呈する免疫不全マウスおよびラットを用いる。また、多光子顕微鏡によるカルシウムイメージングを平行して行い、移植条件の検討と網膜移植による光応答回復について解析を行う。 さらに、現時点では網膜移植による光応答の回復がシナプスの再形成によるものか、もしくは移植片による保護効果か明らかでない。そのため、パッチクランプ法によってホスト・グラフト間におけるシナプスのつながりを調べていく予定である。
|
Causes of Carryover |
パッチクランプ用マニピュレータを購入する予定であったが、 カルシウムイメージング実験を優先する方針へと転換したため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
パッチクランプ用マニピュレータを購入する。それ以外の研究費は当初の予定通り、消耗品、試薬、学会・論文投稿などの研究発表費等に用いる予定である。
|