2014 Fiscal Year Research-status Report
リンパ浮腫の発症メカニズムに介入する非侵襲的予防的治療法の開発
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26861504
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
矢吹 雄一郎 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (30610357)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | リンパ浮腫 / 予防 / レニン・アンジオテンシン系 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度はラットリンパ浮腫モデルの作成を行った。われわれはUnnoらが報告した手法を導入し、慢性リンパ浮腫モデルの作成を試みた。具体的には、ラット下肢において①大腿基部を全周性に切開する、②鼡径膝窩リンパ節の郭清を行う、③大腿基部において顕微鏡下に大腿動静脈に伴走するリンパ管を結紮する、④切開した皮膚は内反縫合し、真皮の連続性を断つ。上記を5例において施行したところ、術後浮腫を形成することに成功した。インドシアニングリーン蛍光リンパ管造影でもリンパ液の鬱滞を確認できた。しかし、それらは比較的早期に改善してしまい、定量的な解析が困難であることが判明した。現在、上記の手法に加え、腹腔内リンパ節廓清や放射線照射を試行しており、より慢性的に持続する浮腫モデルの作成を試みている。 また、今後ラットリンパ浮腫モデルにおける組織学手解析を行うが、その比較対象としてヒト慢性リンパ浮腫におけるリンパ管や皮下組織の組織学的情報が必要となる。本学倫理委員会承認の下、上記検体の供与を受け検証中にある。具体的にはヘマトキシリン・エオジン染色など一般組織染色とLYVE-1やpodoplanin、SMA、TNF-α、IgG、IL-1β、Il-6、C1q、C3、C4抗体を用いた免疫組織学的解析を施行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究では慢性リンパ浮腫におけるレニンアンジオテンシン系に関わる薬物の抗線維化作用、抗炎症作用の解析が主である。そのためには、慢性的かつ長期的に継続する慢性リンパ浮腫モデル動物の作成が必須である。しかし、前述の通り報告にあった手法と同様の操作を施した実験動物において、再現性を持って慢性的なリンパ浮腫を作成することが困難であることが判明した。そのため、さらなる追加処置を施したリンパ浮腫モデル作成を試みているが、その計画と承認に時間を要した。 その一方で、慢性リンパ浮腫モデル動物の作成にあたって必要な基本的な手技や器具、装置は確認できており、比較的安定的な処置が施行可能な状況にある。 全体としては、研究達成度は遅れているが、推進性を持って今後の研究を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の達成度が遅延している主な原因は前述のとおり慢性的かつ長期的に継続する慢性リンパ浮腫モデルの作成が滞っているところにある。このモデルを作成することは本研究の根幹であり、必須の事項である。そのため、さらなる追加処置を施したモデル作成を試みている段階にある。 しかしながら、スピード感をもって研究を推進するためには、同時並行で様々な検証をする必要性がある。研究計画では段階的に施行することとしていた。具体的には、①ラット慢性浮腫モデルの作成とそれにおける検証、②ヒト慢性浮腫患者における検証、③イヌリンパ浮腫モデル作成と解析、の3項目を段階的に行うこととしていた。現時点で、①の遅延がある一方、②は同時並行で施行可能と考える。そのため、段階的な検証ではなく、①を行いながら②も施行、検証していく。
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Causes of Carryover |
前述の通り、研究の達成度は遅れている状況にある。具体的には、本研究の根幹をなすラット慢性リンパ浮腫モデルの作成が滞っている。そのため、研究が次段階へ進行できない状況にあり、必要な物品や消耗品の購入に至っていない。また設備備品費として申請した備品のうち位相差顕微鏡が入手できたため、購入が不要となった。 上記2点を理由として次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度の検証では、実験動物を用いたさらなる検証が必要となることが判明した。そのため、実験動物の購入費や維持管理費など平成26年度で計上していない消耗品費などが生じる予定である。また、ヒト慢性リンパ浮腫患者における組織学的解析を一部前倒して平成26年度に施行している。平成27年度においてはそれらを継続することと、得られたデータや組織、プレパラートなどの整理・管理にeffortを割かなければならなくなる。そのため、短期間でも適宜実験助手の雇用が望ましい。現段階では、次年度使用額はそれらに使用する計画としている。
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