2014 Fiscal Year Research-status Report
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26861507
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
井原 玲 杏林大学, 医学部, 助教 (40532065)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 静脈奇形 / 血管内皮細胞 / 加温生食 / 細胞障害性 / ケラチノサイト / 線維芽細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、血管腫血管奇形の中でも、特に治療の困難な、広範囲静脈奇形病変に対する新規治療法として考案した、「加温された生食水を病変内に注入し、熱作用によって静脈奇形病変の血管内皮細胞を破壊する新規治療」の最適化および基礎的な検討を目的としている。本治療法では、病変内の血管内皮細胞と周囲組織との選択性を、大量投与による全身的毒性のない加熱した生理食塩水を媒介とした熱作用に求める。 MTT細胞傷害性アッセイを用いて、継代の容易な線維芽細胞、ケラチノサイトに対する加熱生食の細胞障害性からの検討を行った。培養細胞の私的生育温度は37℃であり、100℃であれば作用時間によらず細胞は死滅するものと考えられる。96 well plateに培養した各細胞に、40℃から100℃まで10℃毎の割り付けで加温した生食を10秒作用させてから早急に常温培地に入れ替え、MTTアッセイ(Cell Proliferation Kit I (MTT), Roche applied science)を用いて細胞傷害性の検討を行った。線維芽細胞およびケラチノサイトは継代が容易であるため再現性の実験を行うがばらつきが生じてしまう。主な原因として、加温した生理食塩水を注入後、速やかに回収し、常温の培地に入れかえ即座に細胞カウントを行うが、余熱によりplate内の細胞の死滅数が増加し、正確な細胞数の定量が行えない可能性が考えられる。本実験は血管内皮細胞を死滅させるが、血管周囲組織としての線維芽細胞、ケラチノサイトに損傷を起こさないことが理想であるため、温域および作用時間は非常に重要であり実験の再現性が求められる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
再現性の確認を行った際に、定量にばらつきが生じる温度領域が存在した。そのため、誤差における原因の検討を行った。常温培地の入れ替え後、余熱による誤差が生じる可能性があったため、各温度における常温培地の量を調整する必要があった。 また、血管の内皮細胞は継代が困難なため、その都度臨床から試料を収集する必要があった。正常な血管および静脈奇形の血管サンプルを臨床から十分量収集することが困難なため、若干の遅延を認めた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在入手した血管内皮細胞を実験が可能な細胞数まで継代中である。細胞の80%致死温度が推定できれば動物実験への移行は可能である。申請者が過去に報告した家兎耳介静脈の血流阻害モデルを用いてin vivoでの加温生食の静脈および周辺組織への影響を調べる。 vitroで得られたデータと、vivoでの結果が必ずしも相関するとは限らないため、試行の後、LT50を与える温度-作用時間曲線を参考に「血管内皮細胞に傷害を来し、30日後にも静脈の再開通を来さないが、周囲組織への傷害を最低限に抑えうる」生食注入条件を最適化する。
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Causes of Carryover |
血管内皮細胞以外の実験でばらつきが生じたこと、血管内皮細胞は継代が困難なため、豊富に存在する資料ではなく、正常血管と静脈奇形血管の試料提供が臨床から容易に得られず予定したより試薬の量が少なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在静脈奇形血管および正常血管の内皮細胞を継代中であり、次年度は余熱による誤差を除いたうえで、試薬を用いてMTTアッセイを行い、さらに実験動物として家兎を用いた検討を行う。
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