2014 Fiscal Year Research-status Report
幹細胞と多血小板血漿の混合移植による骨再生を目指した最適多血小板血漿精製法の解明
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26861514
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
田島 聖士 順天堂大学, 医学部, 非常勤助教 (80724377)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 脂肪組織幹細胞 / 多血小板血漿 / 硬組織再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究概要】我々は脂肪組織幹細胞(ASCs)と多血小板血漿(PRP)の混合物移植による硬組織再生過程を検証するため、ASCs 培養上清とPRP中の成長因子の定量、及び移植実験による再生硬組織の組織学的検証を実施した。 【方法】ラット鼠径部脂肪組織を採取し、間質細胞群を分離精製後、ASCsを第3継代まで培養した。第3継代時のASCs培養上清とPRP中の成長因子量(IGF-1、TGF-β1、HGF、PDGF-AB、VEGF)をELISA法にて測定した。頭蓋骨に骨欠損(Φ5mm)を作製し、ASCs/PRP群、ASCs/Collagen gel群、PRP群、Collagen gel群及び対照群とした。移植4、8週後に採取し、μCT解析、HE染色、Alcian blue染色及び免疫組織学的観察を行った。 【結果】ASCs 培養上清中にはPDGF-AB 以外の4つの成長因子の放出が豊富に確認できた。10%塩化カルシウムによる活性化後のPRP中の5つの成長因子は、活性化前と比較し有意に高値であった。動物実験では移植8週後ASCs/PRP群の再生硬組織体積率は65%であり、他群と比較し有意に高値を示した。ASCs/PRP群の移植4、8週後の免疫組織学的観察では再生硬組織はオステオカルシン、オステオポンチンともに陽性であり、Alcian blue染色にも陽性を示し、海面骨様硬組織再生も認められた。 【考察】ASCsとPRPの混合物移植により、放出された成長因子が既存骨からの再生を促進させ、迅速な硬組織再生の可能性が示唆された。しかし、ASCsを用いた硬組織再生に最適なPRP精製方法を確立するため、今後も継続的な基礎研究を行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要のとおり研究成果が出ており、学会発表および論文掲載の研究発表も行うことができている。 特にPRP作製に関する条件設定やPRPから放出される成長因子(PDGF-AB、IGF-1、HGF、TGF-b1、VEGF)の解析についても実施し興味深いデータを得ることができた。 また、ASCsについては、脂肪組織の採取後に間質細胞群を分離・精製後、基本培地(DMEM +10%FBS +1%ABAM)にて第3継代まで培養を行い、その後骨分化誘導培地で培養し、ASCsの骨分化能についても確認(Alizarin red染色)もできた。さらに、ASCsとPRPの混合物をSEMによる観察後、ラット頭蓋骨欠損モデルに移植し、その骨再生能についてもin vivoで確認した。その結果は、ASCs/PRPのSEM画像では、フィブリン網に包まれたASCsとその周囲に多くの血小板が存在しているのが観察された。動物実験においては移植8週後のμCT解析では、ASCs/PRP群の再生硬組織体積率は65%であり、他群と比較し有意に高値を示した。組織学的観察では、既存骨と連続し、明確な骨小腔構造を伴った厚みのある新生骨様組織が確認できた。また免疫組織学的観察では、ASCs/PRP群の再生硬組織はオステオカルシン、オステオポンチンともに陽性であり、オステオポンチン陽性部位はAlcian blue染色に陽性を示し海綿骨様硬組織の再生も認められた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はPRP精製時のいくつかの設定項目について詳細な検討を行うとともに、ASCsとの混合移植による効率的な硬組織再生が実現できるように継続的な研究を実施する。 PRP精製については、採血量、抗凝固剤の種類(へパリン、EDTA、ACD-A)、遠心分離条件(回転数と時間)、PRPの活性化方法など様々な設定項目があるので、これらの条件設定に関してもASCsと最適なPRP作製法についての検討を進める予定である。 ASCsについては、PRP添加の有無による、ASCsから放出される成長因子量(PDGF-AB、IGF-1、HGF、TGF-b1、VEGF)の解析も行う予定である。 また、動物実験においては、移植したASCsの動向調査も行う予定であり、移植したASCsが直接的に骨芽細胞に分化しているか否かの観察も免疫組織学的に検証予定である。さらに、通常は脱灰標本で組織学的観察を行うが、今後我々は、骨のミネラル成分を含有している非脱灰標本での組織学的観察も検討している。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては、本研究が初年度ということもあり、研究の遂行を優先していたため、研究成果を学会等で発表する機会が少なかったことがあげられる。そのため、学会参加に伴う旅費があまり発生していないのが、その原因と考えられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後の研究費の使用計画は、物品費以外では研究成果を発表するための学会参加の旅費に積極的に使用する予定である。
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Research Products
(4 results)