2015 Fiscal Year Research-status Report
脂肪幹細胞と低酸素プレコンディショニング法を用いた血管・皮膚再生療法の開発
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26861515
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
覚道 奈津子 関西医科大学, 医学部, 助教 (00509490)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 脂肪幹細胞 / 低酸素 / 増殖 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、ヒト皮下脂肪組織中に存在する脂肪幹細胞( Adipose-derived Stem Cells: ASCs)の存在が知られるようになり,骨髄由来幹細胞に代わる幹細胞として再生医療への応用が期待されています。少量のドナーサイトから多量の幹細胞を得るためには、細胞の大量生産技術が求められているとともに、その増殖分化制御システムを解明することは科学の進歩に貢献するだけでなく、治療の効果や安全性を高めるのにも役立ちます。 一方、酸素濃度の変化が種々の細胞の増殖性をはじめとする生理活性に影響を与えることが報告されていますが、その ASCs への影響については未解明でした。本研究では低酸素培養における ASCs の増殖効果を検討し、そのメカニズムについて解明を試みました。 ASCs の細胞増殖は低酸素培養にて促進し、培養 7 日目では通常培養の 1.6 倍の細胞数に増加しました。その増殖効果はシグナル伝達系の阻害剤で抑制される一方、低酸素下ではこれらの活性化に伴う、HIF-1αの増加が認められました。低酸素培養下では VEGF と FGF-2 の mRNA 発現と細胞外分泌量は促進しましたが、両者の増殖因子のうちで ASCs の増殖に影響を与えたのは FGF-2 であることを明らかにしました。 FGF-2 遺伝子のHIF-1α結合部位を明らかにして、 HIF-1αのノックダウンは FGF-2 の mRNA を低下させることをみつけました。従って、脂肪幹細胞の低酸素下の増殖促進機構には HIF-1αの発現を介した FGF-2 の作用が関与することを解明しました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
低酸素が種々の細胞の増殖性をはじめとする生理活性に影響を与えることが報告されているが、その ASCs への影響は不明であった。今回、その増殖効果とメカニズムの一部が明らかになり、論文報告もできたため、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究から、 低酸素下における脂肪幹細胞の増殖促進機構が明らかになった。低酸素下の脂肪幹細胞は増殖が促進し、FGF-2 や VEGF などの増殖因子も多量に分泌することが明らかになった。これらの培養法や増殖因子が分泌された培養上清は、今後の再生医療応用への利用に役立つものと考えられる。今後、研究をさらに発展させ、低酸素環境が脂肪幹細胞形質の維持や分化の調節などにおいて影響を与えるかどうかを検討していく予定である。
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Causes of Carryover |
購入予定であった試薬が海外受注製品であるため、3月に発注したが、納品が3月中に間に合いそうになかったため、来年度の購入に廻したから。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験用試薬(細胞外基質:ラミニン、エンタクチン等)
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