2014 Fiscal Year Research-status Report

アシドーシス時の心機能改善にコルホルシンダロパートはカテコラミンより有用か？

Research Project

Project/Area Number	26861516
Research Institution	Hokkaido University
Principal Investigator	伊丹貴晴北海道大学, (連合)獣医学研究科, 助教 (90724203)
Project Period (FY)	2014-04-01 – 2017-03-31
Keywords	アシドーシス / カテコラミン / コルホルシンダロパート / 心拍出量
Outline of Annual Research Achievements	アシドーシスは、心筋β1受容体のカテコラミン反応性の作用を減弱させ、心収縮力を低下させることが知られている。本研究は、アデニル酸シクラーゼを直接活性化することで心収縮力増大が期待できるコルホルシンダロパートのアシドーシス時における治療効果を評価することを目的としている。当該年度の計画目標の１つであるビーグル犬におけるアシドーシスモデルの作成を研究したところ、二酸化炭素を吸入することにより、動脈血二酸化炭素分圧を上昇させることで呼吸性アシドーシスモデルの作成に成功した。一方、代謝性アシドーシスモデルの作成では当初計画していた吸入酸素濃度を低下させて低酸素血症状態とし、生体代謝過程で生じる乳酸などの不揮発性酸を用いてアシドーシスを作成しようと試みたが、予定していたpH値まで低下させることができなかった。今後は血管内に補助的に乳酸などを投与し、pH値のさらなる低下を狙う。研究実施計画での研究順序とは逆に、呼吸性アシドーシス時のカテコラミンおよびコルホルシンダロパートの治療効果を評価することを先に検討した。現時点では、ビーグル犬の使用予定頭数まで研究できていないため、統計学的処理はできていないが、アシドーシス時のカテコラミンの作用減弱は再現することができ、心機能の減弱を認めた。一方、ラット摘出心ではアシドーシス時においてもコルホルシンダロパートは強心作用をカテコラミンと比較して維持するとの報告があるが、生体ビーグル犬を用いた本研究では一定の心機能が抑制されている傾向が認められた。生体においては圧受容反射などの血管系との関連や神経液性因子が複雑に交絡している可能性がある。本年度ではその関係因子をさらに検討する予定である。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 3: Progress in research has been slightly delayed. Reason 当該年度の目標であった代謝性アシドーシスの作成において、生体ビーグル犬を吸入酸素濃度10％程度に低下させた低酸素血症状態としたが、生体代謝過程で生じる内因性の不揮発性酸だけでは、2時間の低酸素血症ではpH7.2までしか低下させることができなかった。安定したモデル作成がカテコラミンおよびコルホルシンダロパートの心収縮力の評価に不可欠であり、そのモデル作成に現在遅延が生じている。一方、生体ビーグル犬を用いた呼吸性アシドーシスモデルの作成はすでに完成している。本研究はクロスオーバーでの評価であり、研究の遂行には一定の期間を必要とするため、同様にやや遅延しているが、本年度上半期には結果が得られると予想される。
Strategy for Future Research Activity	呼吸性アシドーシス病態時のカテコラミンおよびコルホルシンダロパートの心機能および血管系に及ぼす影響に関しては、モデル作成が確立できているため、現在の実験系を遂行していくことで結果が得られると予想される。代謝性アシドーシスモデルの作成に関しては、生体ビーグル犬を低酸素血症とするだけでは計画しているpH値までは低下させることが困難であることが明らかとなった。したがって、今後の方策として、末梢静脈より外因的に不揮発性酸である乳酸を投与することで、補助的にpH値を低下させることを試みる予定である。また、アルカリ化薬を含まない輸液製剤や酸性アミノ酸製剤などを併用することで、さらに相加的にpH値を低下させることができると予想される。当初の研究計画より達成度がやや遅延していることから、呼吸性アシドーシス時の各種強心薬の心機能評価と併行して、代謝性アシドーシスモデルの確立を本年度上半期内に行い、研究計画通りの遂行を目的とする。
Causes of Carryover	当該年度の目的であった代謝性アシドーシスモデルの作成を確立することができなかった。当初の計画よりもやや遅延しているため、供試ビーグル犬および使用するカテーテル等の消耗品の購入が遅滞し、次年度使用額が生じた。
Expenditure Plan for Carryover Budget	遅延している代謝性アシドーシスモデルの確立および研究の遂行のために、供試ビーグル犬2頭を購入予定である。また、心機能評価に用いる肺動脈カテーテルおよびモデル作成に必要な麻酔薬および消耗品を購入する予定であり、次年度使用額を適正に使用する計画である。