2018 Fiscal Year Research-status Report
HERS形成におけるRhoシグナリングの制御とPaxillinの相互作用の解明
Project/Area Number |
26861550
|
Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
熊上 深香 (坂野深香) 岩手医科大学, 歯学部, 研究員 (30710826)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 細胞・組織 / 歯学 / 歯の発生 / ヘルトヴィッヒ上皮鞘 / 細胞遊走 |
Outline of Annual Research Achievements |
歯根発生の開始時にはエナメル器のCervical loop(CL)に由来する細胞によって Hertwig上皮鞘(HERS)が形成される。HERSは歯根象牙質の形成を誘導することが知られているが、HERS形成のメカニズムについては十分に理解されていない。我々は、細胞の走化性を制御するPaxillinが外エナメル上皮(OEE)やHERSに強く発現することを見いだした。そこで、本研究ではHERS形成に関わるPaxillinの役割を明確にすることを目的としている。研究成果として,我々はCK14cre-TdTomato発現マウスから,TdTomato発現HERS細胞株を作製し,HERS形成に関わる細胞の遊走性に関する実験系を確立した。またHERS形成における活性型Rhoシグナルの局在とRho kinaseの発現について検討した結果,外エナメル上皮細胞からHERSに至る過程でRhoシグナルが活性化していることが明らかとなった。一方でHERS形成が行われたあと,一部の細胞でRhoの活性化が低下しており,同時にこれらの細胞において上皮間葉転換のマーカーであるslugやビメンチンの発現が上昇していることを示した。さらにdominant-negative-RhoAマウスを用いてHERS形成期でのRhoシグナルの活性化を低下させるとHERSの伸張が抑制され,同時に歯根象牙質形成もまた抑制された。これらの結果から,HERS形成と維持にはRhoシグナルの活性化が重要であることが示唆された。加えてRhoシグナルの低下はHERSの断裂と関連することが示唆され,malassezの上皮遺残形成に深く関わっていることも明らかとなった。これらのHERS形成に関連する細胞遊走因子paxillinとRhoシグナルも深く関連していることが明らかとなり,来年度はこれらのシグナルとの相互関係について調べる予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々はCK14cre-TdTomato発現マウスから,TdTomato発現HERS細胞株を作製し,HERS形成に関わる細胞の遊走性に関する実験系を確立したこと,さらにdominant-negative-RhoAマウスを用いてHERS形成期でのRhoシグナルの活性化を低下させた実験モデルマウスなどの実験系の確立は有用な研究成果である。またHERS形成における活性型Rhoシグナルの局在とRho kinaseの発現について検討して外エナメル上皮細胞からHERSに至る過程でRhoシグナルが活性化していることが明らかとしたことは新たな発見である。このように新規の実験系の確立やHERSの形成におけるRhoシグナル関与の重要性を明らかにしたことは重要な成果だと考えており,研究の進捗は概ね良好であったと判断した。これに加えてRhoシグナルの低下はHERSの断裂と関連することが示唆され,malassezの上皮遺残形成に深く関わっていることにも研究が展開しており,今後の進捗も期待できる。但し,HERS形成に関連する細胞遊走因子paxillinとRhoシグナルとの関係については未だ明らかになっておらず,今後の研究計画である。
|
Strategy for Future Research Activity |
Rho シグナリングにおける機能獲得・喪失実験を行い、Paxillin の発現変化を観察する。我々は,今までの研究でHERS 細胞株の樹立に成功している。そこで,Rhoシグナルの機能獲得と機能喪失実験を行い,Paxillin の発現変化と細胞の走化性の変化について検討を行う。またPaxillinは細胞骨格や細胞接着因子(E-カドヘリン)と深く関わっているのでこれらの発現との関連性を追求する。さらにタモキシヘン誘導型のdominant-negative-RhoAマウスを用いてHERS形成期でのRhoシグナルの活性化を低下させた場合のpaxillinの発現変化と調べ,Rho活性化-Paxillin-HERS形成の関係をより詳細に分析する。一方で,paxillin の発現変化がRhoシグナルの活性化に及ぼす影響を検討する。具体的にはpaxillinのsiRNAを用いてpaxillinの発現低下と細胞の遊走性,Rhoシグナルの活性化の変化を調べてPaxillin-Rhoシグナル-HRES形成の関係を明確にする。前年度の成果においてHERSからMalassez形成にはRhoシグナル低下を介した上皮間葉転換が深く関わっていることも明らかにしたので,paxillinの発現低下が上皮間葉転換にどのように関わっているかについてもさらに研究を進める予定である。
|
Causes of Carryover |
(理由) 平成26(2014)年11月23日~平成30(2018)年3月31日まで、産前産後の休暇および育児休業により研究を中断し、平成31年度まで補助事業を延長したため。 (使用計画) 上記の推進方策において示した実験で使用する試薬・物品を購入する。
|