2014 Fiscal Year Research-status Report
新たな肺炎球菌性肺炎の感染制御法の検索―補体系と好中球免疫の撹乱機構の解析―
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26861570
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
土門 久哲 新潟大学, 医歯学系, 助教 (00594350)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 肺炎球菌 / 補体 / Toll様受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
わが国の肺炎による死亡数は誤嚥性肺炎を含め年々増加し,一昨年度ついに死因第3位となった.現在,主たる肺炎起因菌である肺炎球菌に対し,ワクチンによる予防および抗生剤による治療が行われているが,両者とも問題点は多い.以上のことから,現在の肺炎球菌感染症に対しては,細菌―宿主の感染メカニズムの解析結果に基づく更なる感染制御法の検索が重要だと考えた.昨年度は,肺炎球菌が補体成分を分解することでヒトの免疫システムである補体系の破綻と好中球による排除から回避するという仮説に基づき,肺炎の重症化機構を,免疫学的,分子生物学的手法を用いて解析を行った.具体的には,1. 肺炎球菌の補体成分C5分解能の有無,2. 肺炎球菌菌体に対する菌体認識TLRの同定,3. 肺炎球菌によるTLR2-C5aRのクロストーク撹乱現象の有無を明らかにする目的で研究を行った. その結果,1に関して,肺炎球菌もしくはその培養上清を用い,補体成分C3とC5に対する分解能を検討したところ,今回の実験条件下では明確な分解能が認められなかった.次に3に関して、肺炎球菌を感染させた好中球にC5aを添加し,1-3時間後の殺菌能を比較したが,明らかな殺菌能の低下は認められなかった.そこで2に関して、ヒト単球系細胞株を肺炎球菌生菌、熱処理した死菌、もしくは肺炎球菌の培養上清にて感染・刺激を行ったところ、生菌感染によるサイトカイン産生の上昇が有意に認められた.一方で,死菌もしくは培養上清刺激においてはサイトカイン産生が僅かであった.さらに,生菌感染時,サイトカラシンDを用いて単球細胞内への肺炎球菌の取り込みを抑制すると,有意にサイトカイン産生が減少することが明らかとなった.これらの結果から,肺炎球菌は単球表面のTLR2を活性化するとともに,エンドソーム内でもTLRを活性化する可能性が考えられた.27年度も引き続き研究を推進する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究目的である1-3に関して,概ね達成しているため.
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Strategy for Future Research Activity |
申請時における今後の推進方策としては,1. 気管支感染マウスモデルの構築,2. TLR ノックアウトマウスを用いた肺炎球菌排除能の変化,3. C5aR ノックアウトマウスを用いた肺炎球菌排除能の変化,4. 好中球枯渇マウスにおける肺炎球菌の排除能と炎症インデックス,5. C5 ブロック抗体による肺炎治療効果の検討,6. C5aR アンタゴニストによる治療効果の検討,であったが,平成26年度の研究成果において,肺炎球菌によるC5の分解と,C5aRを利用した免疫回避については観察されなかった.したがって,申請時,研究が当初計画どおりに進まない時の対応として計画書に記載した,「肺炎球菌を認識するTLR と好中球の肺への浸潤の二つに焦点を当てることとし,平成27年度は3, 5, 6以外の研究を進める」に準じ,1, 2, 4の実験計画を推進することとする.また肺炎球菌の毒素として報告されるニューモライシンは,TLR認識と密接な関わりがあり,またその細胞毒性により好中球を破壊するため,免疫回避する可能性が考えられる.従って,計画7として「ニューモライシンによるTLR活性化と,肺組織破壊との関係の検討」を加え,研究を推進する.
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