2015 Fiscal Year Research-status Report
ビスフォスフォネート存在下の骨代謝におけるγδT細胞の意義
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26861583
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Research Institution | Osaka Dental University |
Principal Investigator |
堂前 英資 大阪歯科大学, 歯学部, 講師 (50454559)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | γδT細胞 / IL-12 / IL-18 / I kappa B zeta / BTLA |
Outline of Annual Research Achievements |
26年度では骨芽細胞株MG63をビスホスホネートで処理することでヒト末梢血由来γδT細胞を活性化し細胞傷害性を誘導することを確認した。 27年度では炎症状態でのγδT細胞の役割を検討するために、マクロファージ系の細胞が産生するIL-12, IL-18などのサイトカインに対するγδT細胞の反応を検討した。IL-12, IL-18はビスホスホネートの非存在下で、すなわちメバロン酸経路の中間代謝産物であるイソペンテニルピロリン酸の蓄積とは無関係に、γδT細胞によるIFNgamma, granzyme B, などのエフェクター分子の発現を誘導した。同時に、IL-2の非存在下で増殖活性を誘導することも確認した。さらに、γδT細胞の共抑制受容体であるBTLAの発現を抑制することを明らかにした。BTLAのはγδT細胞の標的細胞が発現するHVEMによる抑制シグナルを受容するが、本受容体の発現低下はγδT細胞による細胞傷害活性を亢進すると考えられる。次に、以上のγδT細胞のサイトカインによる活性化のメカニズムを検討した。上記のサイトカイン刺激によりSTAT4の活性化とI kappa B zetaの発現の誘導が確認された。これらの転写因子・核内因子の発現は上述したγδT細胞の活性化と矛盾しないものである。以上の結果から、γδT細胞は炎症環境下でサイトカインに曝露されることにより、抗原刺激とは無関係に活性化され、細胞傷害活性を獲得することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までにγδT細胞の抗原特異的な活性化と、標的細胞の傷害活性の上昇を確認した。本年度は抗原刺激の非存在下で、γδT細胞は炎症性サイトカインにより活性化されることを確認した。抗原刺激と同様に、サイトカインで活性化されたγδT細胞は標的細胞に対する傷害活性を示すことが明らかとなった。以上の結果から、炎症環境下ではγδT細胞が骨芽細胞を傷害する可能性があるという仮説に一定の根拠が見出されたと考えられる。以上の理由から、研究は概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度では、27年度までに明らかとなったin vitroでの知見を動物実験で検証する予定である。ヒトγδT細胞であるVγ9Vδ2T細胞は霊長類にのみみられるサブセットであることから、生体で実験を行う際には免疫不全マウスへヒトγδT細胞を移植する系を用いて研究を行う。この系でも、γδTCRへの抗原提示を行う分子であるBTN3A1が存在しないため、抗原刺激による評価は困難である。しかしながら、in vitroではγδT細胞は炎症性サイトカインのみで強力に活性化され、骨芽細胞株を傷害することが明らかとなったことから、γδT細胞を免疫不全マウスに移植する系でも一定の知見が得られると期待できる。
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Causes of Carryover |
当該年度は、in vitroでの実験系による実験結果が順調に得られたため、当初予定していたin vivo系の構築のための予備実験をを次年度に延期し、in vitro系の実験を完結させることに注力した。これにより、in vivoの系で行う実験の焦点を絞り、用いる動物数を削減し、効率よくin vivoの研究を遂行できると考えられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、前年度に完結させたin vitroで得られた実験結果を、動物実験を用いて再現することに注力する。前年度の余剰分(前年度の約10%)と次年度の予算の大部分は、免疫不全マウスの購入に用いて、生体を用いた研究を行う。
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