2014 Fiscal Year Research-status Report
修復象牙質形成におけるBMP-1のプロテアーゼ活性非依存的機能の解明
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26861609
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Research Institution | Kanagawa Dental College |
Principal Investigator |
室町 幸一郎 神奈川歯科大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (50637072)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 修復象牙質 / CCN2/CTGF / BMP-1 / 象牙質・歯髄複合体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、齲蝕に対する象牙質・歯髄複合体の防御反応のひとつである修復象牙質形成の機序を歯髄細胞が産生する分泌タンパク質およびプロテアーゼに着目して解明し、歯髄保存療法へと応用することを目的としている。 申請者はこれまでの研究から、①CCNファミリータンパク質に分類される分泌タンパク質であるCCN family member 2 / connective tissue growth factor (CCN2/CTGF)がヒト齲蝕罹患歯において象牙芽細胞様細胞層に発現すること、②astacinファミリーに属するプロテアーゼであるbone morphogenetic protein-1 (BMP-1)がヒト齲蝕罹患歯において修復象牙質の形成に伴い発現が亢進すること、③ヒト歯髄培養細胞においてBMP-1はプロテアーゼ活性に非依存的にCCN2/CTGFの発現を促進することを明らかにしている。 CCN2/CTGFはosteogenesis / chondrogenesisの際に発現が亢進することが報告されており、歯髄でのCCN2/CTGF発現亢進は骨様の修復象牙質形成と密接な関連があると考えられる。また、BMP-1は象牙質の基質となるtype I collagenやdentin phosphoprotein (DPP) 、dentin sialoprotein (DSP)、dentin matrix protein-1 (DMP-1)の成熟にプロテアーゼとして関与することが報告されている。しかし前述の通り、BMP-1にはプロテアーゼ活性に依存しない新たな働きがあるものと予想された。 そこで本研究ではさらに、BMP-1がCCN2/CTGFの発現を誘導する機序について検討を行ったところ、BMP-1がエンドサイトーシスによってヒト歯髄培養細胞に取り込まれCCN2/CTGFの発現を促進することを明らかにした。またこの際にBMP-1はCCN2/CTGFの発現を促進するが、DSPやDMP-1の発現には関与しないことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、BMP-1がCCN2/CTGFの発現を促進する機序の解明を目的とし、①Dynamin依存性のendocytosisによるBMP-1の細胞内への移行、②BMP-1の細胞における局在、③BMP-1とTRENDICとの結合、の3点について検討を行う計画であった。 ①、②については推測される結果とほぼ同じ結果が得られた。また、③については現在研究が進行中である。 従って、本研究はおおむね順調に進展しているものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までの研究結果から、修復象牙質形成時に出現する象牙芽細胞様細胞の分化にBMP-1およびCCN2/CTGFが関与する可能性が推測される。そこで詳細を明らかにするために、BMP-1およびCCN2/CTGFがヒト歯髄SP細胞に及ぼす働き、特に象牙芽細胞マーカーと骨芽細胞マーカーの発現を比較し、修復象牙質が骨様な性質を有する組織であることの裏付けを検討する。 ①ヒト歯髄SP細胞の分取 ヒト抜去歯から歯髄を無菌的に分離、培養した細胞をhoechst33342で標識し、FACSを用いてhoechst-blue (450 nm)およびhoechst-red (675 nm)ともに陰性である分画の細胞集団をヒト歯髄SP細胞として分取する。 ②BMP-1およびCCN2/CTGFがヒト歯髄SP細胞の分化に及ぼす作用の検討 ヒト歯髄SP細胞をBMP-1およびCCN2/CTGFで刺激後、total RNAを抽出し、Real-time PCR反応を行う。象牙芽細胞マーカーとしてDSPPやnestin、HSP25を、骨芽細胞マーカーとしてosteocalcinやosteopontinを、硬組織の基質となるtype I collagenなどを標的として検索を行う。特に、修復象牙質は象牙質より骨組織に類似した特徴を示すことから象牙芽細胞マーカーと比較して骨芽細胞マーカーの発現が亢進するとの推測のもと検討を行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は、当初計画していた論文の受理が次年度になったことにより生じており(平成27年5月に受理)、論文掲載に必要な経費として平成27年度請求額とあわせて使用する予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究計画を遂行するにあたり抗体や培地に添加する血清などの購入を予定している。組換えタンパク質は主としてCCN2/CTGFやBMP-1のリコンビナントタンパク質を、ヒト歯髄SP細胞に及ぼす作用について検討するために購入する。抗体はrabbit anti-human DSPP antibodyならびにrabbit anti human nestin antibodyをwestern blottingによるSP細胞の分化の検討のために購入する。なお、osteocalcinやosteopontin抗体はすでに購入しているものを使用する。そのほかに細胞培養に用いるウシ胎児血清や培地、western blottingに用いるECL Primeなどを購入する予定である。本研究で得られた結果は、国内では日本歯科保存学会(春季・秋季の年2回開催)、日本歯内療法学会、日本CCNファミリー研究会、海外ではIADR、The World Endodontic Congressでの発表を予定しており、これを実現するために研究費を使用する。
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Research Products
(4 results)