2016 Fiscal Year Research-status Report
骨吸収阻害薬により惹起される顎骨壊死の分子機構-骨細胞・骨芽細胞の関与について-
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26861717
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
宮川 和晃 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (50635381)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 顎骨壊死 / Sclerostin / 骨細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
Bisphosphonate(BP)製剤やヒト抗RANKL抗体などの骨吸収抑制薬を投与されている患者は、難治性の顎骨骨髄炎(顎骨壊死)を生ずることがある。しかし、詳細な発症機序は明らかではない。そこで、骨吸収抑制薬で引き起こされる顎骨壊死の病態形成機構について骨細胞・骨芽細胞の機能変化に着目した動物実験を行っている。15週齢のC57/BL6J雌マウスに対して、ゾレドロン酸を0.8mg/kg/weekを週2回腹腔内投与したBP反復投与マウスモデルを作成し、BPによる顎骨への影響を検討している。前年度は、BP反復投与マウスの長管骨骨端部の海綿骨量を増加させるだけでなく、下顎枝皮質骨厚が対照群と比較して増加したのを確認した。これによりBP反復投与は長管骨だけでなく顎骨にも影響を及ぼすことを確認した。次に、骨形成に関るWntシグナルの阻害因子であり、骨細胞特異的に産生されるSclerostinに着目した。まずは、骨におけるSclerostinをコードするSost遺伝子発現をリアルタイムPCR法にて確認した。その結果、BP反復投与1か月のマウスより摘出した長管骨におけるSost発現にはBP投与で変化をみとめないものの、上顎口蓋におけるSost発現はBP反復投与で優位に高値を示した。一方、骨の石灰化やリン代謝に関与する骨細胞マーカー遺伝子Dmp1の遺伝子発現にはいずれも変化なかった。ところが、血清中のSclerostin濃度を測定したところ、BP投与群は対照群と比較して有意に低値を示した。次に、長管骨・顎骨におけるSclerostinの免疫染色を行ったところ、BP投与群の骨中にはSclerostinが多く分布していることが判明した。以上の結果からBPは骨細胞機能の変化を与えることが示唆されたが、その機能変化を考察するには部位、成長段階(週齢)を考慮する必要があった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
骨細胞は骨基質中に埋没し、骨形成と骨吸収により成立するカップリング機能の調節を担う細胞として注目されている。本年度においてWntシグナルの抑制因子であるSclerostinに注目することで骨吸収抑制薬による骨細胞機能の変化を捉えることができた。また、顎骨と長管骨ではSclerostinおよびSost遺伝子発現に差異が生じている事から、顎骨壊死の病態形成に対して何らかの影響を及ぼしている可能性を見出す事ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
臨床研究において骨粗鬆症患者を対象とした臨床研究においてBP製剤、Denosumabの投与は血中Sclerostin値が増加する報告が見受けられる。また、小児における長期間BP投与患者では顎骨壊死は発生していないことも興味深い。これらのことから、週齢における変化や閉経型骨粗鬆症のモデル(OVXマウス)を用いた実験を行い、骨細胞のみならず骨代謝全体を俯瞰した検討を行ってゆく。
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Causes of Carryover |
ディスカッションを通じて現在の実験結果をより精緻なものとするために追加実験を実施する必要があり、次年度学会発表を通じて社会に発信する準備をしているため今回延長申請を行った。また、平成28年の夏に動物舎の空調装置が故障し緊急工事を行う必要があった。そのためマウスを用いた動物実験を一時中断したことにより動物実験期間が延期になったことも補助事業延長期間を延長申請する理由となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
消耗物品の購入費および学会への旅費、論文作成費用に充てる。
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Research Products
(5 results)