2014 Fiscal Year Research-status Report
口腔癌の抗癌剤および放射線耐性に関与するエピゲノム異常の解明と個別化治療への応用
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26861738
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
廣末 晃之 熊本大学, 医学部附属病院, 助教 (00638182)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 口腔癌 / エピゲノム / DNAメチル化 / ヒストン修飾 / 抗癌剤耐性 / 放射線耐性 / エピジェネティクス治療薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は抗癌剤耐性および放射線耐性口腔扁平上皮癌(OSCC) 細胞株におけるエピゲノムの異常の解析を行う予定としていたため、まずは抗癌剤耐性に関与するDNAメチル化異常の解析を行った。当所属分野では5FU-耐性OSCC細胞株(SAS/FR2、Ca9-22/FR2)を有しているため、同細胞株と親株を用いて、DNA メチル化アレイ解析を行った。その結果、抗癌剤耐性に関与してDNA メチル化状態が変化している遺伝子がいくつか認められた。続いてそれらの遺伝子の発現を過去に行っていた遺伝子発現アレイのデータと照らし合わせると、高メチル化遺伝子では発現が低下しているものがみられた。また、放射性耐性OSCC 細胞株においても親株と共に遺伝子発現アレイ解析を施行した結果、5FU-耐性と共通して発現が低下している遺伝子が抽出された。今後は放射線耐性株についてもメチル化アレイ解析を実施し、発現低下がある遺伝子の発現機構に関してDNA メチル化状態との関連性について解析する予定である。続いて、エピジェネティクス治療薬によるエピゲノムの変化と抗癌剤感受性の検討を行った。DNA 脱メチル化剤である5-aza-2'-deoxycytidine(5-aza-dC) 、ヒストンメチル化酵素阻害剤であるDZnep、BRD4阻害であるJQ1を用いて解析を行った。それぞれの阻害剤でOSCC細胞株による細胞増殖の検討を行った結果、濃度依存的に細胞増殖が抑制された。5-aza-dCおよびJQ-1を用いて、5-FUに対する抗癌剤感受性試験を行った結果、5-FU耐性株において抗癌剤耐性が緩和される結果が得られた。JQ-1はヒストンのアセチル化リジンを認識し、そこに結合するBRD4を阻害するため、抗癌剤耐性に関与する遺伝子について、BRD4の結合の変化をChIPアッセイによって今後する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は抗癌剤耐性および放射線耐性口腔扁平上皮癌(OSCC) 細胞株におけるエピゲノムの異常の解析を行う予定としていたため、抗癌剤/放射線耐性に関与するDNAメチル化異常の解析および遺伝子発現解析を施行した。また、エピジェネティクス治療薬によるエピゲノムの変化と抗癌剤感受性の検討については、各種阻害剤を用いて実験を実施しており、おおむね研究計画に応じた実験の遂行ができたと思われる。しかし、データ不十分な項目や抗癌剤/放射線耐性に関与するヒストン修飾状態の解析など現在遂行中の実験もあるため、今後さらに実験を重ね、口腔癌の抗癌剤および放射線耐性に関与するエピゲノム異常について解明したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はOSCCの抗癌剤/放射線耐性に関連する遺伝子群の高次エピゲノムの解析およびOSCCにおけるエピゲノム・プロファイルとその臨床的意義の解析を中心に解析を進めていく予定である。OSCC 組織の解析としては当所属分野に 保管している臨床検体の内、治療前の生検時のサンプルを用い、OSCC組織における耐性関連遺伝子群についてDNAメチル化解析、クロマチン構造の解析を遂行していく予定である。またより簡便で低侵襲な診断法の開発を目指して、唾液や血清よりDNA を抽出し、耐性関連遺伝子群のDNA メチル化状態を解析し、細胞株やOSCC 組織の結果と比較検討を行っていきたいと考えている。これらの解析結果を基にOSCC 組織におけるエピジェネティックな特徴ごとにエピゲノムプロファイリングを行い、臨床病理学的特徴と併せその臨床学的意義を解明する。臨床病理学的特徴としては、TNM 分類、Stage 分類、浸潤様式、再発・後発転移の有無、生存、術前治療の治療効果(抗癌剤、放射線感受性)等の項目について検討を行う。以上の検討により、本研究の目的である口腔癌の抗癌剤および放射線耐性に関与するエピゲノム異常を解明し、エピゲノムプロファイルに基づいた癌の個性診断の確立と個別化治療への実現を目指したいと考えている。
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Causes of Carryover |
DNA抽出、細胞培養等に使用する消耗品の納期が間に合わなかったため、次年度分へ繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
DNA抽出、細胞培養に使用する消耗品を購入予定である。
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Research Products
(1 results)