2014 Fiscal Year Research-status Report
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26861743
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Research Institution | Kyushu Dental College |
Principal Investigator |
左合 徹平 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (80710574)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 慢性疼痛 / 非定型顔面痛 |
Outline of Annual Research Achievements |
情動ストレスに対してMPS群でL/Hのより大きな上昇が認められた.自律神経活動の調節は視床下部室傍核を介して行われるが,視床下部室傍核は大脳辺縁系,前頭前野の上位脳と中脳,橋,延髄孤束核までの延髄の下位脳幹の双方とネットワークを持ち、中枢自律神経線維網を構成する.恒常性維持のために自律神経に伝えられる情報は身体ストレスと情動ストレスでは異なった経路で行われる.身体ストレスは生命危機回避の観点から,迅速な対応が必要となるため,迷走神経を介して孤束核に伝えられた身体情報は,直接視床下部室傍核に到達する.情動ストレスには即時の生命危機はないが,より高度な情報処理が必要なため上位脳を経て,視床下部室傍核に伝えられる.情動ストレスに対する交感神経活動の違いは上位脳での情動ストレス処理がMPS群とcontrol群とでは異なっていたことを示す.情動の中枢は大脳辺縁系にある.MPS群の交感神経活動の亢進に情動ストレスにより刺激される大脳辺縁系の機能変調が考えられる.情動ストレス負荷時の前後半のL/Hを比較した結果,control群では後半で有意に低下したのに対してMPS群では低下は認めなかった.本研究では3種類のストレス価の異なる映像を快,不快,中性の順序で被験者に提示した.被験者はある程度の時間,ストレス画像の提示を経験すれば不快なストレス画像が提示されるタイミングの予測が可能である.通常,生体は情動ストレスによる心身への影響を軽減するために,情動的な防御態勢を作ることができる. その中心的な役割を果たすのが前頭前野である.前頭前野は大脳辺縁系が情動ストレスに対し警戒を発したのを受けて,視覚および体性感覚野における入力を減弱させることで情動ストレスに適応しようとする.MPS群は前頭前野の情動ストレスへの適応機能の低下が推察される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
慢性疼痛の発症機序に大脳辺縁系、前頭前野などの高次脳機能障害が関与することを明らかにする研究である.初年度において情動ストレスに対する交感神経活動変化によって慢性疼痛患者の高次脳機能の変調を予測できた.当初の目的を達していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の2年目を迎え,高次脳のどの部分が機能変調を来しているかを明確にする必要性がある.また,機能変調が亢進あるいは低下のいずれであるかを明確にする必要もある.そのために,ラットの慢性疼痛モデルを用いてストレス状態を評価し,高次脳におけるc-fos等の発現を調べる予定である.また,映像を用いた情動ストレス下にfMRIを用いた臨床研究を行う予定である。大脳辺縁系を賦活させる薬剤としてケタミンがある.ケタミンはペインクリニックでは鎮痛薬としてよく使用されるが,近年,そのNMDA受容体を介した抗うつ効果も注目されている.慢性疼痛患者へケタミンを投与した場合のfMRIを用いた検討まで研究を進める.
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Causes of Carryover |
本年度は慢性疼痛患者の自律神経活動を主に検討し、動物実験を行うことができなかったため,動物実験による検討を次年度に持ち越したため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験用の動物及び実験器具,試薬の購入に使用する予定である.
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[Presentation] ケタミンの抗うつ効果の検討2014
Author(s)
長谷川 円,左合徹平,多田 幸代,中津 由博,山口 喜一郎,長行事 由貴,原野 望,布巻 昌仁,椎葉 俊司,渡邉 誠之
Organizer
日本歯科麻酔学会
Place of Presentation
新潟
Year and Date
2014-10-11 – 2014-10-12