2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26861765
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Research Institution | Fukui College of Health Sciences |
Principal Investigator |
木下 英荘 福井医療短期大学, その他部局等, 講師 (80601103)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ラマン分光法 / 扁平上皮癌 / 癌細胞 / イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
ラマン分析機器を用いて、扁平上皮癌の凍結乾燥切片をサンプルに分析を行った。本年度の目標は、癌細胞を細胞単位で再現性良くイメージングし、細胞質と核を識別できるようなイメージングを得ることであった。 扁平上皮癌細胞を細胞単位でラマン分析を行うための測定条件であるが、扁平上皮癌を組織レベルで分析した際の条件を参考にした。サンプルは、未加療の凍結扁平上皮癌組織を使用し、クライオスタットにて厚み8ミクロンの薄切片を作成し、ゴールドコーティングされたプレパラート上に設置した。ラマン分析機器の測定条件は、レーザー照射20秒、各測定位置での積算測定回数は2回、レンズは100倍を使用した。また、測定は、0.5~1ミクロン間隔で、格子状にマッピング測定を行った。また、連続切片を作成し、薄切片の一方はラマン分析に、他方はH&E染色を行い、サンプルの測定対象領域の組織・細胞形態を確認しならがら分析を進めた。 測定結果は、60ミクロン平方の微小領域で、数個の扁平上皮癌細胞の形態をイメージングすることができた。再現性よく癌細胞形態のイメージングが可能であった、ラマンスペクトルのバンドは、1406-1466、1549-1579カイザーのピークであった。これらのピークの帰属であるが1445カイザーは、コラーゲンやphospholipidsに帰属され、1552カイザーのピークは、tryptophanやporphyrinに帰属される。前者のピークは、扁平上皮癌細胞の細胞質に、後者は核に優位に分布することが示唆された。これらのラマン分析機器により得られたイメージングは、癌細胞を構成するタンパク質やその構造の分布を半定量的示したものである。これらのラマン分析により得られた成分分布を示すイメージは、連続切片を作成したH&E染色による癌細胞の形態と一致していることが、ラマン分析によるイメージングの信頼性を高めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラマン分光法により未処理の組織サンプルを用いてそのイメージングを目的とした研究は、ほとんど行われていない。多くのラマン分光法を用いた癌組織の研究は、正常組織と癌組織のスペクトルの違いに焦点をあてたものである。ラマン分析により得られたスペクトルには、多くのピークが含まれ、その各ピークの位置は、タンパク質の種類や構造に関する情報が、ピークの強度はその成分が含まれる相対的な量に関する情報が含まれる。測定ポイントを格子状に設定し、マッピング測定を行えば、面分析が可能となる。この、面分析を癌細胞単位で行えれば、癌細胞内部のタンパク質やタンパク質の分子構造の分布が明らかとなる。これまでは、タンパク質やその構造の分布には、主に免疫組織化学染色を行わなければならなかったが、ラマン分光法が確立すれば、一度の分析で多くの成分の分布が明らかとなり、非常に有用である。 本研究初年度の目標は、ラマン分光法により癌細胞を細胞単位でイメージングすることであった。再現性良く癌細胞形態をイメージング可能であったラマンスペクトルのバンドは、1406-1466、1549-1579カイザーのピークであった。これらのピークの帰属であるが1445カイザーは、コラーゲンやphospholipidsに帰属され、1552カイザーのピークは、tryptophanやporphyrinに帰属される。前者のピークは、扁平上皮癌細胞の細胞質に、後者は核に優位に分布することが示唆された。これらの成分の分布で、表現された扁平上皮癌細胞形態は、連続切片を作成したH&E染色による癌細胞形態と、ラマン分光器に搭載された測定領域を確認するCCDカメラの癌細胞形態と概ね一致した。以上によりラマン分析機器により得られたイメージングは、癌細胞を構成するタンパク質やその構造の分布を半定量的に示したものであると解釈できる。
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Strategy for Future Research Activity |
ラマン分析により、扁平上皮癌細胞を再現性高くイメージング可能であったラマンスペクトルのピークは、コラーゲンやphospholipidsが帰属する1445カイザーと、tryptophanやporphyrinが帰属する1552カイザーであった。ここで、今後の研究の推進方策であるが、現段階で再現性高く扁平上皮癌細胞をイメージング可能なピークは二つであるので、このピーク数を増やさなければならない。ピーク数を増やすことができれば、新たな成分や分子構造の分布が明らかとなる。もう一つの課題は、1445カイザーのピークは、コラーゲンやphospholipids、1552カイザーのピークはtryptophanやporphyrinと、一つのピークに対して複数の成分を有する事である。これは、連続切片でサンプルを作成する際に、①ラマン分析用、②形態確認のためのH&E染色用と、③免疫組織科学染色を行うための切片を新たに作成することを考慮した。この免疫組織科学染色用の切片を使用して、コラーゲン、phospholipids、tryptophan、porphyrinの各成分の免疫組織科学染色を行えば、ラマン分光法によるイメージングがどの成分の分布を反映しているのかが、明らかになる可能性がある。
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Causes of Carryover |
ラマン分析を用いたイメージングにおいては、その分析領域を再現性高く明瞭なイメージを得る事がまず重要で、その次に、そのイメージが何を意味しているのかを解釈する必要がある。このラマン分析で得られた結果を、補完する分析法の一つに、FT-IR(フーリエ変換赤外分光高度計)を使用した分析法がある。ラマン分析でもFT-IR分析でも得られるスペクトルのピークの位置や、その帰属される分子の成分や構造はほぼ一致している。 サンプルの分析であるが、望ましい手法は、同じ測定領域をラマン分光器とFT-IRでで測定することである。ラマン分光法では、凍結切片をゴールドコーティングされたプレパラート上に設置した。この、サンプルをそのままFT-IR分析できるかの検討とFT-IR分析機器を用いた先行研究に時間を要した。その結果、ラマン分析に用いたサンプルをそのままの状態で、FT-IR分析可能であるこが判明した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ラマン分析に用いたサンプルをそのままの状態で、FT-IR分析することが可能であることが判明したので、ラマン分析のターゲットとして分析した同じ領域のFT-IR分析を行っていく。ラマン分析よるイメージングとFT-IR分析によるイメージングが、同様となれば、ラマン分析によるイメージングの信頼性がはるかに向上する。よって、今後、ラマン分析したサンプルをFT-IR分析するために、費用を使用させていただく。
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