2015 Fiscal Year Research-status Report
Apert症候群頭蓋冠縫合部早期癒合症に対するヘパラン硫酸鎖制御による治療法開発
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26861777
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
鈴木 尋之 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 非常勤講師 (70634492)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 先天異常症候群 / Apert症候群 |
Outline of Annual Research Achievements |
Apert症候群は、線維芽細胞増殖因子2型受容体(FGFR2)のリガンド(FGF)依存的機能亢進型の点変異(S252W)を原因とし、頭蓋冠縫合部早期癒合症や合指症を示す。本研究の目的は、Apert症候群モデルマウスを用い病態発症メカニズムの解明を行なうとともに、受容体とリガンドの結合に必須であるヘパラン硫酸(HS)を制御しFGFシグナルを効果的に抑制することで、頭蓋冠縫合部早期癒合症が改善されるかを検討し、非侵襲的な治療法開発への糸口を見つけることである。HSは細胞膜および細胞外基質(ECM)に普遍的に存在し、FGFやPDGF等、様々な成長因子の働きを調節している。FGF・HS・FGFRの細胞表面でのternary complexの形成が、細胞内のチロシンキナーゼの活性化とリン酸化を引き起こす。グリコサミノグリカンの主成分であるHSはコアプロテインと1つ以上の負電位のヘパラン硫酸鎖 (HS鎖) によって構成されている。HS鎖はFGFと高い親和性を示し、リガンド刺激により伸長が促進される。HS鎖の非存在下ではFGFはFGFRと結合せず、FGFシグナルは活性化しないことが分かっている。今年度は昨年度に引き続き、ヘパラン硫酸(HS)分解酵素を用いることでFGFR2機能低下状態を作り出し、縫合部早期癒合に対する阻害効果を評価するための実験を行った。具体的には、昨年度に行った野生型マウスを用いた実験系の確立、手技の熟練に基づいて、ヘパラン硫酸分解酵素を含有させたビーズを、胎生期のFGFR2-S252W knock-inマウスの縫合部に局所的に作用させた場合の、縫合閉鎖への作用を検討した。さらに、頭蓋冠由来骨芽細胞を用いて、ヘパラン硫酸分解酵素の骨芽細胞分化・増殖への影響を調べた。その他、Apert症候群と同様に頭蓋冠縫合部に異常をきたす先天異常症候群の一つである鎖骨頭蓋冠異形成症の埋伏過剰歯に関して、三次元データを用いた臨床的な研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究で用いたApert症候群モデルマウスは胎生18.5日で冠状縫合早期癒合が認められる。胎児マウス頭蓋冠縫合部にヘパラン硫酸分解酵素含有ビーズを作用させる実験系において、効果的に早期癒合を阻害するための胎齢の選定に時間を要した。また、Apert症候群モデルマウス(Fgfr2-S252Wマウス)は、EIIa-CreマウスおよびFgfr2Neo-S252Wを交配し作出するが、マウスの飼育室の移動により、胚操作からのクリーニングが必要となり、実験計画の大幅な遅れにつながったと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
胎齢15~16日または生後1日において頭蓋冠組織や細胞を単離培養し、Apert型変異おおよびヘパラン硫酸分解酵素の影響を検討する。その際、単離培養した頭蓋冠由来の骨芽細胞を免疫不全マウスBALB/c の背部皮下に移植し、最長で8週間後での骨様組織の形成を観察する。さらに、FGFRシグナル抑制による早期縫合閉鎖への治療効果をin vivoで明らかにするため、ex utero (子宮外胎児手術) 実験系において、FGFシグナル阻害に関与すると考えられる物質(ヘパラン硫酸分解酵素)を含有させたビーズやナノゲルを、頭蓋冠縫合部に最長で72時間作用させる。
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Causes of Carryover |
動物飼育室の移動に伴う、胚操作を含むクリーニング等の作業により、実験計画の遅れが生じ、実験消耗品などの購入が先送りとなったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験器具や試薬などの実験消耗品の購入の他、論文作成のための校正・印刷費などを計画している。
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