2016 Fiscal Year Research-status Report
3DSを用いた全身的感染予防プログラムの臨床的評価および作用機序の解明
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26861789
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
新里 法子 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 助教 (10508104)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 3DS / 造血幹細胞移植 / 全身的感染予防 / 口腔粘膜炎 / 口腔内除菌 / 小児がん治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
抗がん治療の急速な進歩により,化学療法や放射線治療などの骨髄破壊的な処置を伴う造血幹細胞移植を受ける小児が近年増加している。このような治療は,しばしば重篤な口腔粘膜炎を惹起し,痛みや摂食困難を生じるため,小児のQOLの低下を招いている。 本研究では,広島大学病院小児科に入院し骨髄抑制下にある小児を対象として,各個人専用に作製したマウスピース様のドラッグリテイナーと抗菌薬を応用した全身的感染予防プログラム(3DS)を実施し,3DS前後の粘膜状態および口腔細菌叢の変化について前年度からの調査を継続して行った。 抗がん治療の低年齢化,治療方法の多様化,治療機関の専門化が進んだ結果,当初の想定と比較して研究対象となる小児が減少した。これに対し,小児科医師および病棟看護師と医科歯科合同カンファレンスを月2回開催し,新患および再発による再入院の小児について,あるいは治療方針・時期の変更について早期に情報を得られるようにした。また,週1回小児科病棟で歯科回診を実施し,入院した小児について網羅的に口腔内診査を行って口腔内状況を把握し,より早く歯科治療や3DSを実施できるような診療体制を構築した。 その結果,小児科病棟に入院したすべての小児について,造血幹細胞移植前に口腔内診査および粘膜状態の評価を行うことができた。しかし,小児科では入院から造血幹細胞移植に至る期間が短縮傾向にあり,移植前に齲蝕治療や抜歯,機械的歯面清掃などの口腔内細菌叢の除去を行う時間的余裕がなく,3DSプロトコールを実施できない小児が増加したため,研究対象小児数がなかなか得られない状態である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究では,広島大学病院小児科病棟に入院し,抗がん治療によって易感染状態にある小児を対象としている。しかし,当小児科が中四国の血液疾患の基幹病院であるため,低年齢で協力の得られない小児や病状の進行した小児,他院で治療成績不良の小児など,難症例の入院が多く,3DSを実施できない小児が増加した。また,抗がん治療の多様化,治療機関の専門化が進み,化学療法後に他院へ転院して陽子線治療を受ける小児や,他院で移植前処置を受けた後に当院に入院して造血幹細胞移植を受ける小児など,3DS前後の粘膜状態および口腔細菌叢の変化について継続して評価することができない小児が増加した。さらに,HLA一致骨髄移植,HLA半合致骨髄移植,末梢血幹細胞移植,臍帯血移植など,寛解に至るまでにひとりの小児に対して複数回の造血幹細胞移植を実施するケースが増加し,平均入院期間が延長するとともに,当初の想定よりも新患人数が減少した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き,広島大学病院小児科に入院した造血幹細胞移植を受ける小児を対象とし,3DS実施前後の口腔粘膜状態および細菌叢の変化を調査する。ただし,当初の計画よりも研究対象小児の減員を行う。 また,抗がん剤による口腔粘膜細胞への影響を検討し,口腔粘膜炎の発生機序を解明するため,粘膜上皮培養細胞を用いた検討を行う。 さらに,得られた知見について学会発表および論文投稿を行う。
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Causes of Carryover |
研究代表者は平成27年4月に産前産後休暇および育児休暇から復帰したが,育児に伴って研究時間が大幅に減少している。また,研究対象小児数がなかなか得られないため,研究が遅れていることから,次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究期間を平成29年度まで延長したため,次年度使用額は平成28年度分を繰り越して適切に使用する予定である。 具体的には,口腔細菌叢を検査するための培地や試薬,唾液分泌量や性状検査のための市販のキットに加え,口腔細菌と抗がん剤との相互作用を検討するため,ヒト由来正常口腔粘膜細胞や試薬キット類,血液培地などを購入する費用を支出する予定である。 さらに,研究成果を報告するための学会発表および論文発表のため,旅費や翻訳費,論文印刷費などを支出する予定である。
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