2015 Fiscal Year Research-status Report
骨粗鬆症治療新薬の矯正治療への影響:骨粗鬆症ラットを用いた歯槽骨と歯根吸収の評価
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26861796
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
橋本 恵 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 特任研究員 (80724517)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 骨粗鬆症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は「異なる作用機序を持つ骨粗鬆症治療新薬が、骨粗鬆症を有する矯正患者の歯の移動や歯根吸収、歯槽骨の状態にどのような影響を与えるかを解析すること」であり、詳細な目的は(1)骨粗鬆症モデルラットの歯牙に矯正力をかけた際の歯槽骨改造を明らかにする、(2)骨粗鬆症モデルラットにおける最適矯正力を明らかにする、(3)様々な作用機序を有する新しい骨粗鬆症治療薬の影響を明らかにする、の3点を挙げていた。 10 週齢雌のウィスター系ラットを健常群、骨粗鬆症群、骨粗鬆症+ゾレドロン酸投薬群の3群に分け、骨粗鬆症群と骨粗鬆症+投薬群に対して両側卵巣摘出を行い、続いて骨粗鬆症+投薬群のみ投薬を行った。実験開始時と卵巣摘出術から16週目にラット頭部のマイクロCTを撮影し、上顎右側第一臼歯近心歯槽骨を計測し、次の結果を得た。健常群と比較して骨粗鬆症群では骨密度 (BMD), 組織体積中の骨塩量(BMC/TV)が有意に減少した。また、骨粗鬆症+ゾレドロン酸投薬群では骨塩量(BMC), 骨量 (BV), 組織量 (TV)が他の2群と比較して有意に増加していた。これは我々の以前の研究で計測を行ったラット脛骨の皮質骨の変化と類似した傾向を示しており、海綿骨の結果とは大きく異なり、上顎第一臼歯近心歯槽骨は卵巣摘出とゾレドロン酸投与に対して皮質骨のような挙動を示した。上顎第一臼歯近心の歯槽骨が構造上ほぼ海綿骨を含まないことは、この結果を支持するものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は「異なる作用機序を持つ骨粗鬆症治療新薬が、骨粗鬆症を有する矯正患者の歯の移動や歯根吸収、歯槽骨の状態にどのような影響を与えるかを解析すること」である。しかし、現段階では矯正力を付与しない場合において、健常群、骨粗鬆症群、骨粗鬆症+ゾレドロン酸投薬群の3群で骨の計測部位により異なる反応が観察される可能性が示唆されたため、引き続き歯槽骨の様々な部位を測定し、計測部位の選定を行う必要性が生じた。 今後、さらに種々の矯正力(10g, 25g, 50g, 100g)の付与を行う研究と種々の骨粗鬆症治療薬(デノスマブ、オダナカチブ、SERM(選択的エストロゲン受容体調節薬)、エストロゲン)の投与量を決定し、その後に骨粗鬆症治療薬投与中に矯正力を付与する研究を行う必要があるため、達成度としてはやや遅れていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
根管中隔部や歯間部歯槽骨など様々な部位の計測を行い、部位による卵巣摘出や投薬への反応の差を評価する。 また、矯正力を付与した場合の歯槽骨を計測し、矯正力への反応の各群間での差を評価する。 さらに、骨粗鬆症治療薬デノスマブ、オダナカチブ、SERM(選択的エストロゲン受容体調節薬)、エストロゲン、ゾレドロン酸をそれぞれ投与し、歯の移動量と歯根吸収量、歯槽骨量の増減と形態の変化を計測する。 以上の過程から、健常ラット、骨粗鬆症ラット、投薬ラットの結果を比較し、それぞれの骨粗鬆症治療薬が歯槽骨に対してどのような効果を与えるかを明らかにする。
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Causes of Carryover |
卵巣摘出とゾレドロン酸投与を行ったラットの歯槽骨を計測したところ、歯槽骨の反応に部位特異性が存在する可能性が示唆され、歯槽骨の計測部位の検討が必要となった。そのため、計画の進行に遅れを生じ、各種薬剤を使用した研究を開始できなかったため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
まず、歯槽骨の種々の部位の計測を行い、その結果を検討する。その後、「歯の移動量と歯根吸収量から骨粗鬆症ラットおける最適矯正力を決定する」研究、さらに、「 様々な作用機序を有する新しい骨粗鬆症治療薬の影響を明らかにする」研究を順次行うことで使用する。
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