2014 Fiscal Year Research-status Report
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26861831
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
坪井 秀憲 九州大学, 歯学研究科(研究院), 研究員 (60614253)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | デンタルプラーク / FISH |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の今年度の目的はヒトの口腔内に設置したハイドロキシアパタイトディスクに付着したデンタルプラーク内において立体構造を保ったままfluorescence in situ hybridization(FISH)法により個々の細菌種を染め分け、観察出来る手法を確立することであった。実際に申請者を含む本研究室に所属する者3名に検体作成を依頼し8.16.24時間のデンタルプラークを作成し観察したところStreptococcus属, Neisseria属, Actinomyces属,Prevotera属など8属にわたる主要菌属の染め分けを行うことが可能であった。この手法に関しては現在までのところ主要菌属のみでしか試行は行っていないがプローブを作成しさえすればほぼ全ての菌属・菌種での染め分けが可能であると考えられる。さらにStreptococcus属, Neisseria属, Actinomyces属を用いて共染色を行いデンタルプラーク内の構造解析及び口内細菌の初期付着を経時的に観察した。すると実際のヒトの口腔内においては、これまで考えられていたように層状に菌が堆積してプラークを形成していくわけではなく、幾つかの菌属が集まって一つのドーム状or山状の構造を作りこれが成長してさらに大きなバイオフィルムとして成熟していくような経過が観察できた。またその際も特定の菌が最下部に存在しており、この菌がデンタルプラークの初期形成過程において重要な役割を果たしている可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上述の通り本研究の今年度の目的はFISH法により個々の細菌種を染め分け、観察出来る手法の確立までであった。この手法については実際に8属にわたる主要菌属の染め分けを行うことが可能であり、さらにはプローブを作成しさえすればほぼ全ての菌属・菌種での染め分けが可能であると考えられ、ひとまず系は確立できたと考えられた。さらに今年度の研究過程で得られたサンプルを用いて観察・解析を行ったところ、系の確立のみならずこれまでの常識とは異なった知見を示唆するような結果を得ることができた。この知見については本当であれば大変興味深く今後の歯学研究に大いに貢献すると考えられるので今後も深く掘り下げていきたいと考えている。以上のような状況から本研究における今年度の達成度は当初の計画以上に進展していることとした。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画では今後は本学の学生でう蝕経験の全くない者10名に直径5 mmのハイドロキシアパタイトディスク6枚を接着したマウススプリントを7日間装着してもらい、装着後1、2、3、4、5、7日目に1枚ずつディスクを回収しディスク上に形成したプラークを観察し、解析を行う予定であった。しかしながらこれまでの研究過程において、48時間以上の十分に成熟したデンタルプラークではFISH法では個々人のサンプルを観察しても顕著な差を見出すことが難しい点や昨年度の研究からハイドロキシアパタイトディスク上への細菌の初期付着において興味深い点などが見出されたことから当初の計画を変更することとした。具体的にはこれまでは実際にヒトの口内で起こっているを主眼に置いた実験系において研究を行ってきたが、これを実験室の培養系に移し替える。そして様々な菌を取捨選択して混ぜ合わせて培養を行い、昨年度得られた知見:幾つかの菌属が集まって一つのドーム状or山状の構造を作りこれが成長してさらに大きなバイオフィルムとして成熟していくような経過及び特定の菌が最下部に存在しており、この菌がデンタルプラークの初期形成過程において重要な役割を果たしているか、についての検証・再現とこの現象に必要不可欠な菌属の特定を目的として研究を行うこととした。
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Causes of Carryover |
昨年度は主に実験系の確立のために予算を使用し、そのための技術習得などを目的として他の研究室に出張して多少の研究を行う予定であった。しかしながら自研究室での研究が予想以上にうまくいってしまったため出張旅費及び出張先で使用する物品費などが必要なくなり次年度に繰り越すこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は実験計画を多少変更し当初必要と考えていなかった実験室内での培養系において研究を行うことを計画しているため、消耗試薬やプラスチック代などの消耗品・物品費が余計に必要と考えている。
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