2014 Fiscal Year Research-status Report
うつむき姿勢保持の身体への影響および自動運動による苦痛緩和効果についての研究
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26861856
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
古島 智恵 佐賀大学, 医学部, 助教 (00363440)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | うつむき姿勢 / 20歳代成人 |
Outline of Annual Research Achievements |
網膜剥離、黄班円孔等の網膜疾患に対して行われる硝子体手術では、患者は術後数日~約10日間にわたり下を向いた姿勢(うつむき姿勢)の保持を余儀なくされる。術後約90%の患者はこの体位の保持により、頚部痛、肩部痛、腰痛、頭痛、関節痛などの身体的苦痛のみならず精神的な苦痛も訴えている。しかし、このような患者の苦痛についての詳細や援助の有効性についてはこれまでに詳細に調べられていない。本研究は、眼科疾患術後のうつむき姿勢を想定した体位の保持が身体へ及ぼす影響を生理学的、心理学的側面から調べ、更にうつむき姿勢のまま行える自動運動の効果を検討することを目的としている。 平成26年度は、基礎的な知見を得るために眼科疾患患者ではなく被験者を20歳代健常成人22名(平均年齢21.9±2.6歳)とし、眼科疾患術後のうつむき姿勢を想定して生体への影響について検討した。その結果、うつむき姿勢保持ではコントロールに比べ気分的な評価において「怒り-敵意」、「疲労」が有意に高くなることが示され(p=0.042、p<0.001)、頸部および肩部の疼痛は、コントロールに比べ有意に上昇することが示された(p<0.001、p=0.013)。生理学的指標においては、うつむき姿勢保持はコントロールに比べ、副交感神経活動を表すHF成分は有意に低下し(p=0.014)、交感神経活動を表すLF/HFは有意に上昇(p=0.016)することが示された。肩部および腰部皮膚血流量において、コントロールでは血流の低下と上昇を繰り返すが、うつむき姿勢の保持では時間経過と共に低下する推移を示しコントロールとの交互作用がみられた(p=0.005)。以上の結果から、うつむき姿勢の保持は気分的にも身体的にも苦痛を及ぼすことが生理学的、心理学的側面から明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、研究計画通りに被験者に対して測定を実施し、うつむき姿勢保持による生体への影響についての検討を行った。更に、現在、測定したデータの詳細な分析を進めている。平成26年度の成果は、平成27年度中に学会に発表する予定としている。したがって、予定していた測定の実施および発表の準備ができているのでおおむね順調に進行していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、当初の計画通り、本研究の目的の一部であるうつむき姿勢保持に対する自動運動の効果の検討の内、20歳代健常成人を対象として測定を実施する予定である。
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