2014 Fiscal Year Research-status Report
老年期うつ病者の「レジリエンス」向上に寄与する治療的看護実践の考案
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26861972
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
田中 浩二 金沢医科大学, 看護学部, 講師 (40507373)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 老年期うつ病 / レジリエンス / ナラティブインタビュー |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、老年期うつ病者の「レジリエンス」の発動や向上に寄与する治療的看護実践を考案するための基礎資料を得ることを目的に、老年期うつ病者の「レジリエンス」の様相を明らかにした。入院あるいは外来治療を受けており、急性期症状を脱した老年期うつ病者11名(男性4名・女性7名、年齢62~82歳、平均年齢70.7±6.72歳)を対象とし、1人1回~10回のナラティブインタビューを行い、発病前および発病からの病いのストーリーと回復のストーリーについて語ってもらった。その結果、発病には老いによる喪失体験やライフイベントが影響しており、発病後は絶望感や不安感が大きく微小妄想・罪業妄想・貧困妄想などに支配されたり、様々な身体症状が現れたりして、暗闇の中にいるような体験をしていた。しかし、精神科治療を受けることによって、うつ症状やそれに伴う身体症状が軽快したり、病気をきっかけに配偶者や次世代の家族との絆が再確認できたり、自らの生と死について洞察したり、老年期の新たな生き方を再発見したりすることができていた。これらは老年期うつ病者の「レジリエンス」となっていた。また、発病の原因となったライフイベントに対してソーシャルサポートを導入することや人とのつながりの中で罪悪感や疎外感が緩和できることも回復への力となっていた。 老年期うつ病者の「レジリエンス」を活かすことによって、うつ病からの回復促進のみならず、後期高齢者の2人に1人と言われているうつ状態の高齢者へのサポートと予防、認知症への移行の予防、うつ病や認知症に伴って生じる老年症候群の予防のために意義があり、老年期を生きる人々の安寧な生活の保障に寄与すると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度中に、得られたデータを分析し、論文作成を行う予定であったが、現在データ分析段階である。理由として、1人の対象者の発病から回復の経過を追跡しながら長期間にわたってインタビューを行ったことや該当するケースが少なかったことなどによって、データ収集に26年5月~27年3月までの期間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、老年期うつ病者の「レジリエンス」の様相についてのデータ分析と同時に、次の研究ステップである治療的看護実践の指針を作成し、実践研究に取り組む。また、実践研究を進めていくうえで、対象者の確保のために研究フィールドの拡大を検討する。
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Causes of Carryover |
支出予定していた年度末の海外出張旅費が、諸手続き等の遅れによって当該年度の経費から支出することができなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、旅費ならびに人件費とする。
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