2015 Fiscal Year Research-status Report
行政保健師への市民からの暴言・暴力に関する研究:実態と行政機関の対応方針の分析
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26861993
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
石川 英里 慶應義塾大学, 看護医療学部, 助教 (60644945)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 行政保健福祉機関 / 市民からの暴言・暴力 / 刑法上の犯罪 / 機関の対応方針 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、全国の地域保健機関を対象として、利用者による暴言・暴力について、①刑法上の犯罪の構成要件との関係から、その実態を調査すること、及び②未然防止に関する取り組み方針や、暴言暴力が発生した際の対応方針について、その存否と、方針がある場合にはその内容を調査すること等を目的とするものである。 上記の目的を踏まえて、平成27年度は、地域保健機関の関係者に対して、①および②に関する聞き取り調査を行った。その結果、例えば調査対象とする問題行為について、暴言・暴力のみではなく、ストーカーなども現場では対応に苦慮する行為であり、また、暴言・暴力にも関連する重大な問題行為であるため、調査の対象とすべきであることなど、①に関して質問紙内容を検討する上で、貴重な示唆が得られた。また、平成27年度には、当初の計画を発展させ、地域保健機関の関係者だけではなく、医療機関の関係者に対して、関連する聞き取り調査を行った。その結果、例えば、警察官OBである職員の活動について、同職員が現場で果たすことができる役割は大きいにも関わらず、実際には、活動内容は医療機関間で大きな違いがあることがわかった。そして、その原因は、職務内容に関する組織の方針が明確になっていないことなどにあることが推察された。このことからは、地域保健機関でも、未然防止や、問題事象が生じた場合の対応方針を明確にしておくことの重要性について示唆が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
市民からの暴言暴力に関する、地域保健機関の1)実態把握、及び、2)暴言暴力の問題に関する対応方針に関する聞き取り調査の結果をもとに、法学者、弁護士らと検討した。その結果、地域保健機関だけでなく医療機関との比較を行うことで、より有益な知見が得られることが期待された。 このことから、当初の計画を発展させ、医療機関の関係者にも、同様の聞き取り調査を行い、地域保健機関と医療機関の実態を比較検討した上で、質問紙調査の原案を作成した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の成果を基に、質問紙を完成させ、全国の地域保健機関を対象とした無記名自記式質問紙調査を実施する。また、調査結果をまとめ、適宜、学会、研究会での発表、国内外の学術雑誌への論文投稿を行う。 計画を推進するために、平成27年度と同様、法律家・弁護士等の専門家に助言及び協力を依頼する。また、データ収集及び入力を行う研究補助者を雇用する。また、必要があれば、データ入力を委託する。
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Causes of Carryover |
1.医療機関の関係者にも助言を得るために、研究計画の軽微な変更を行い、平成27年度に予定していた、全国の地域保健機関を対象とした無記名自記式質問紙調査の調査時期を変更し、平成28年度に実施することにした。 2.研究に必要な旅費に関して、年度当初の計画時よりも安価におさえることができたため(聞き取り調査のために旅費を使用する計画であったが、複数人の聞き取り対象者と学会等で一度に会う機会があり、旅費が省けたため)平成28年度に使用する研究費が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
理由1.に対しては、平成27年度に予定していた、全国の地域保健機関を対象とした無記名自記式質問紙調査の調査時期を変更し、平成28年度に実施することにした。従って、平成27年度調査費用として予定していた研究費を平成28年度に使用する。 理由2.に対しては、当初の計画を発展させて予備調査を丁寧に行い、その際の調査費用及び有識者への相談の際の旅費に使用する。また、調査終了後、結果の考察を行う際に、専門的知識の提供を受ける際の謝金として使用する。
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