2016 Fiscal Year Research-status Report
中高年女性における尿失禁予防のための内臓脂肪型肥満改善プログラムの開発
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26861999
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
西村 和美 福岡大学, 医学部, 助教 (20535033)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 中高年女性 / 尿失禁 / 生活習慣 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は商業施設で年4回健康チェック(体重・体脂肪率・内臓脂肪レベルなど)を実施した。健康チェックに参加された地域在住の中高年女性230名を対象に、尿失禁とメタボリックシンドロームとの関連を調査するための質問紙調査票を用いた横断調査を実施した。調査項目は体組成計を用いた測定結果(体重・体脂肪率・腹囲・BMI・内臓脂肪レベル)5項目と生活習慣50項目(食習慣36項目、睡眠習慣<アテネ不眠尺度>8項目、排泄習慣2項目、喫煙・飲酒各1項目、運動習慣1項目、健康管理1項目)、尿失禁症状4項目、排泄問題1項目、既往歴(治療含む)16項目、出産・月経周期2項目、主観的健康感1項目、基本属性(年齢・仕事・社会活動・家族構成)4項目の計83項目とした。 調査は対象者85名より回答があり(回収率37%)、そのうち79名を有効回答とした。調査結果より、地域在住の中高年女性の43.0%が尿失禁症状を有することが明らかになった。その頻度は「週に1回」が31.3%と最も多く、次いで「1日に1回以上」28.1%であった。また、尿失禁の種類は「腹圧性尿失禁」26.6%、「切迫性尿失禁」20.3%、「溢流性尿失禁」1.3%で、量は「下着にしみが付く程度」もしくは「下着が濡れる程度」であった。尿失禁症状の有無群で、生活習慣や既往歴、BMIや内臓脂肪レベルを比較した結果、有意差がみられた項目は「睡眠障害の疑い」(p=0.023)と「腰痛症の既往」(p-0.004)、「出産経験」(p=0.010)であった。BMIや内臓脂肪レベルの項目では有意差はみられなかった。 これまでの調査結果より、生活習慣では「睡眠習慣」との関連が明らかになった。その他、腰痛症や出産経験との関連も示唆された。今後は尿失禁と睡眠習慣との関連において詳細な分析を行い、尿失禁の予防や改善を目的とした生活習慣改善プログラムを開発する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成27年度大学の人員不足や論文投稿などで予定していた横断調査を実施できなかったため、平成28年度に商業施設で健康チェックを年4回(8月,10月,12月,2月)実施し、そこで地域在住の中高年女性を対象に横断調査を実施した。健康チェックでは11時から16時30分の限られた時間の中で体重・体脂肪・内臓脂肪レベル・血圧などを測定し、測定結果の説明を実施したため、1人にかかる時間が15分程度要し、1回の健康チェックで配布できる対象者の人数が80名程度、計4回で230名となった。しかし、実際に体組成計を用いて地域在住の中高年女性の体脂肪率や内臓脂肪レベルを測定したことや、食習慣や睡眠習慣について詳細に調査を実施したことにより有意義な調査結果が得られた。また、参加者の多くは主婦やパート・アルバイトの方であったため、産業保健分野ではなかなか把握できない対象者の生活習慣などの情報を得ることができた。今回も前回の調査結果同様、中高年女性の43.0%に尿失禁症状がみられたため、中高年女性において尿失禁予防や改善への取り組みを行うことの必要性が示唆された。 また、生活習慣への介入に関しては、平成28年度香港で開催されたEAFONS国際学会に参加し、中高年女性へのライフステージを考慮した保健指導のあり方について海外の様々な調査結果をもとに有効な情報を得ることができたため、今後の介入プログラムに取り入れていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度はこれまでの調査結果をもとに尿失禁予防・改善のためのプログラムを開発する。平成28年度までは内臓脂肪型肥満に注目し、その改善として運動や食習慣を中心とした生活習慣改善プログラムを検討していたが、平成28年度実施した調査結果で内臓脂肪型肥満との関連が明らかにならなかったため、中高年女性の睡眠習慣の改善を尿失禁予防や改善のための生活習慣改善に加え、腰痛改善のための体幹トレーニングを取り入れた運動も含めた「尿失禁予防のための生活習慣改善プログラム」に変更し、介入プログラムを開発する予定である。 また、平成28年度に実施した調査結果を国内・国外の学術学会にて発表を行い、広く尿失禁予防のための情報を発信していく予定である。
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Causes of Carryover |
平成28年度は当初の予定ではプログラムを開発し、その効果を検証する予定であったが、前回実施した調査結果より睡眠評価を加えた横断調査を追加する必要性があった。これまでBMIを用いた調査は実施していたが、実際に、体脂肪率や内臓脂肪レベルなど内臓脂肪型肥満を示す調査は実施できていなかったため、平成28年度に商業施設で健康チェックを行うことで、信頼のできる情報が得られると考えた。そのため、当初予定ではなかった体組成計を購入し、健康チェックを実施した。 また、地域在住の中高年女性への健康チェックも含めた調査を行う上で、最も多く中高年女性が利用する商業施設での調査としたため、1回に配布できる対象者の人数が限られてしまい、分析に必要な人数を確保するために時間を要した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度はこれまでの調査結果をもとに尿失禁予防・改善のためのプログラムを開発する。平成28年度までは内臓脂肪型肥満に注目し、その改善として運動や食習慣を中心とした生活習慣改善プログラムを検討していたが、平成28年度実施した調査結果で内臓脂肪型肥満との関連が明らかにみられなかったため、睡眠習慣を中心とした生活習慣改善に加え、腰痛改善のための体幹トレーニングを組み入れ「尿失禁予防のための生活習慣改善プログラム」に変更し、介入プログラムを開発する予定である。 また、平成28年度に実施した調査結果を国内・国外の学術学会にて発表を行う予定である。
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