2014 Fiscal Year Research-status Report
生体超分子構造解析を可能にする表面修飾技術応用コヒーレントX線回折顕微法の開発
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26870006
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
木村 隆志 北海道大学, 電子科学研究所, 助教 (50531472)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | X線顕微鏡 / X線自由電子レーザー / コヒーレント回折イメージング / 環境セル / バイオイメージング / 単分子解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、研究計画に沿って窒化ケイ素(SiN)薄膜上への生体分子修飾・パターニング条件の検討、試料像再構成アルゴリズムの開発とその原理検証を行った。 SiN薄膜上へのタンパク分子の修飾では、タンパク分子と結合するリンカーを有した自己組織化単分子膜をSiN薄膜上に作製することを試みた。SiN薄膜上にスパッタリングや低圧プラズマによる表面処理を施した後、生体分子を結合させるリンカーとなるビオチンタグやNi-NTAタグの修飾を行った。蛍光顕微鏡による修飾タンパク分子の評価を行い、生体分子を均一にSiN薄膜上へ修飾可能なことを確認した。 また、修飾分子のパターニングにも取り組んだ。北大クリーンルーム施設の半導体プロセス設備を利用し、フォトリソグラフィによりリンカーをドット状に配置し、SiN薄膜上に生体分子を正確にパターニング可能であることを確認した。また同様に、電子ビームリソグラフィ装置を使用して、より微小なパターンを作製可能であることも確認している。 さらに、X線自由電子レーザー施設のSACLA(SPring-8 angstrom complact free-electron laser)において、テストパターンを利用した原理検証実験を行った。想定通りの回折強度の増強を検出するとともに、開発した新規アルゴリズムによっての試料像の再構成が可能であることを確認した。 これら以上の結果から、当初計画通りに順調に研究が進展している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究実施計画に挙げていた三項目、①窒化ケイ素薄膜上への生体超分子修飾・パターニング条件の検討、②新規試料像再構成アルゴリズムの開発、③テストパターンによる原理検証のいずれも達成しており、平成27年度の研究基盤の構築に成功している。 以上から、本研究課題の進捗状況は順調であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実施計画に沿って、SACLAでの無機試料・有機試料の計測を試みると同時に、基板修飾技術の一層の精度向上にも取り組む。 無機の計測試料としては、SiN薄膜上のリンカーと結合する有機分子を付着させたナノ粒子を考えている。また有機の計測試料としては、当初予定のリボソーム分子の他に、ビオチン修飾を表面に施したファージの計測も想定している。 基板修飾技術向上の施策としては、より低分子のリンカーの開発や基板表面のプラズマ処理のパラメータ最適化による、分子吸着の一層の特異化を目指す。
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Causes of Carryover |
SiN薄膜の表面粗さは、試料から得られる回折X線の計測精度に大きな影響を与えるため、可能な限り低減された状態であることが望ましい。当初計画では、平成26年度に自動でチップのエッチング・洗浄を行う、特注の装置の購入を予定していた。 しかし研究の進展に伴い、SiN薄膜の新たな作製方法の導入や洗浄ノウハウの蓄積により、既存の装置を使用して十分に低減された表面粗さを有するチップの作製に成功した。そのため当該装置の購入を取りやめ、既存の装置を利用しての研究計画に切り替えた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
剰余分は、既存の装置を利用してチップのエッチング・洗浄を行う際に必要なテフロン製のジグ及び薬品を購入する際に使用する予定である。
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