2015 Fiscal Year Research-status Report
ウランバートル周辺居住区における街路空間の調査と住民との協働観測による問題の共有
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26870013
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
滝口 良 北海道大学, 文学研究科, 共同研究員 (50706760)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | コミュニティ / 都市空間 / 参加型開発 / 公共空間 |
Outline of Annual Research Achievements |
ウランバートル市の最古のゲル地区の一つガンダンにおいて330人の住民から街路関係と近隣関係に関するアンケート調査ならびに複数戸からのインタビュー調査を実施した。ガンダンでは近年街路改善計画が進められており、そのために住民の協力・組織化による各戸の土地供出と街路の拡大が要請されている。調査の結果、同地区では市場経済化後、高騰する地価の影響により住民の流動性が高まるとともに近隣関係が疎遠化しており、敷地の不法拡大による街路の狭小化や廃棄物の街路への投棄による街路環境の悪化に対して住民が大きな不満を有していることが明らかになった。さらに、住民説明会の実施には住民の土地供出意志の形成に一定の効果があることが明らかになり、住民組織形成への行政の介入の有効性が示唆された。 本調査の成果の一部は、坂本剛(名古屋産業大学)、滝口良、Zorig Tuya(有限会社New Urbanism)、井澗裕(北海道大学)によりポスター発表「 ゲル地区再開発計画における社会関係資本の機能と形成:行政の介入による社会関係資本の形成に注目して」(日本社会心理学会第56回大会)として公表された。現在、さらに分析を進めて論文としての発表を準備中である。 モンゴルにおいて現地調査を実施する過程でNGO組織"Ger Community Mapping Center"と情報交換をする機会を得ることができた。同組織はゲル地区の各地で住民によるコミュニティ・マッピングを行う組織であり、住民との協働観測を通じた地域情報のGIS分析を行う本研究にとって非常に有益な情報の提供元となることが期待できる。同組織より本研究計画への全面的な協力をとりつけることができたため、今後は同組織の協力のもとでガンダンとの比較可能な複数のゲル地区において調査を実施する予定。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究が実施したガンダンにおける街路空間と近隣関係に関するアンケート調査およびインタビュー調査は、住民の居住歴・土地権利が街路空間への認識や近隣関係に与える影響を測定するうえで非常に有益なデータとなった。この調査をベースに複数の地域を比較対照することで、ゲル地区の公共空間と社会関係を規定する要因が明らかにすることができる。 モンゴルにおける都市開発や住民組織に関わる組織との連携により、ゲル地区に関して単独の調査では得られない広範な情報を得ることができた。また、滝口の発案によりモンゴルのゲル地区を研究する複数分野の専門家からなる学際的な研究会を組織した。今後、同研究会を通じた情報交換や共同調査により、本研究の課題であるゲル地区における住民の協働と地域の改善に向けたより総合的な取り組みが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は複数のゲル地区において調査を実施し、地域ごとの比較をつうじて住民による協働の事例収集とそれを可能にする条件の分析を進める。これまでの調査によって明らかになった菜園づくりの盛んな地域や特定県の出身者が多く居住する地域などを調査する予定である。
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Causes of Carryover |
平成27年度予算としてモンゴルでの現地調査にかかる旅費を計上していたが、現住所がモンゴルに変更になったため、右予算の使用分を次年度使用額として請求いたしたい。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額として計上した費用については、現地における調査費用ならびに日本における成果報告のための旅費(ウランバートルー成田)として使用を計画。
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