2015 Fiscal Year Research-status Report
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26870020
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
保田 隆明 神戸大学, 経営学研究科, 准教授 (90581546)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ペイアウト / 配当 / 自社株買い / 顧客効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
機関投資家の株式保有比率がペイアウト政策に与える影響について、おもに顧客効果の視点で分析を実施した。投資家によって配当や自社株買いに対しての選好度合いが異なり、それに呼応する形で経営者がペイアウトを実施しているとするのが顧客効果仮説(clientele仮説)である。定期的なキャッシュインを好む投資家は配当を、課税の繰り延べをしたい投資家は自社株買いを望む。また、情報の非対称性の議論とも関連するが、自社株買いでは逆選択の問題が存在する 。それは、自社株買いに応じるか応じないかの判断には情報が必要なため、情報を持たない投資家は自社株買いより配当を好むというものである。 具体的には、機関投資家を国内系と海外系に分類したデータで、主に情報の非対称性に起因する自社株買いにおける逆選択問題の回避行動(海外機関投資家による配当選好)がわが国のペイアウトの現場で存在するのか、そして投資期間で分類したデータを活用することで、長期保有株主が自社株買いにおける希薄化懸念を回避するための行動を企業に要求しているか(長期保有株主による配当選好)を、実証分析を通じて明らかにした。結果は以下の2点にまとめられる。まず、機関投資家を国内系、海外系に分けると、海外機関投資家の持分割合が高い企業では配当に積極的であり、国内機関投資家の持分割合が高い企業では自社株買いに積極的である。2点目は、機関投資家の投資ホライズンが企業のペイアウト政策に影響を与えている可能性を見出したことである。具体的には投資ホライズンの長い(短い)機関投資家の保有割合が高い企業では配当(自社株買い)に積極的となる。これらは、自社株買いにおける逆選択問題と希薄化コストを敬遠する株主の意向を企業側が汲んだ顧客効果による結果だと示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ペイアウトにおける顧客効果に関する分析結果は論文として取りまとめ、現在経営財務研究学会の学会誌に投稿中である。配当と自社株買いの選択問題については、今般投稿中の論文で予定していた分析は行うことができている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在投稿中の論文がアクセプトされれば、当初予定していた研究内容は網羅したことになる。今後は、機関投資家(特に海外機関投資家)の投資行動が企業の財務戦略に与える影響について、ペイアウトを含めた形でカバーしていく。これについては、本年度中に論文として取りまとめていく予定である。
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Causes of Carryover |
前々年度からの繰越額と、旅費が想定よりも少なかったことが主要因。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は研究経過発表での旅費が海外での発表を含め大きく発生する見込み
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Research Products
(1 results)