2014 Fiscal Year Research-status Report
池田政権の「対米協調」外交像の再検討―キューバ糖問題を中心に
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26870022
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
ロメロ・ホシノ イサミ 帯広畜産大学, 畜産学部, 講師 (40579471)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 日本・キューバ関係 / 日本・ラテンアメリカ関係 / 砂糖 / 冷戦 / キューバ革命 / 池田勇人 / 経済封鎖 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、1960年代の日本の対キューバ政策を検討することより、池田政権(1960-1964)の「対米協調」外交像を再検討することを目的にしている。なぜ池田政権が、アメリカ合衆国を敵対視するカストロ政権と国交を維持したのかを探り、この政策形成過程を外交資料に基づいて実証的な分析を行う。具体的に1)先行研究が指摘した日本の「キューバ砂糖依存」の影響の解明、2) キューバを巡る日米間の葛藤の解明、3)戦後日本におけるキューバ及びラテンアメリカの重要性の再検討の3点である。 本研究では、この作業を4年間で行う予定である。最初の年である平成25年度では、主に日本外務省の外交史料館の史料の申請とその閲覧を行った。すべての資料をまだ読むことはできていないが、以下のことが言える。 池田政権の対キューバ政策は、キューバ糖の輸入に焦点を当てたものの、その背景には砂糖以外の利害があった。当時、池田政権は、キューバを含むラテンアメリカを重要な貿易パートナーとして見ていた。ラテンアメリカは池田政権が目指していた「グローバル経済外交」の重要な地域であり、思想の違いで中南米諸国との経済関係を断絶するのは相応しくないと見ていた。これがカストロ政権との国交を維持した1つの理由である。 また池田政権はソ連と社会主義諸国との貿易関係にも大きな関心をもっていた。その結果、キューバとの断絶は社会主義圏との関係を悪化させる可能性があった。池田政権はこれを懸念していた。 最後に資料から分かるのは池田政権がカストロ政権と国交を維持した国を常にモニタリングしていたことである。外務省は英国、スペイン、カナダなどの動きを見逃さず、慎重にキューバとの関係を維持しながら、米国にキューバとの関係を維持するメリットを訴えていたことが分かってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
日本外務省の外交資史料館では、池田政権の対キューバ政策の資料を始め、多くの対ラテンアメリカ政策の資料を閲覧できる。ただし、その際に、必ず外務省に閲覧申請を行わなければいけない。申請できるのは3件であり、そのプロセスは1ヶ月間かかる。これが研究を送らせた最大の理由であるが、帯広畜産大学の何人かの学生の協力のおかげで、できる限りの資料を申請できた。資料の数は思った以上に多く、まだ完全に読むことができていない。それを閲覧するのが今後の課題であるが、これが予定している計画に大きな問題を与えないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
日本外務省の外交史料館の情報をすべて読むのが終われば、本研究が目指している目的に大きく近づくと確信している。その意味で、本研究の方法論を変える必要はない。ただし、日本だけの資料では不十分であり、今後は米国の資料収集とその閲覧が不可欠となる。なるべくスムーズに多くの資料の閲覧とその内容報告を行いたい。
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Causes of Carryover |
「物品費」は若干残ったが、「その他」は、ほとんど使っていない。基本的に資料の複写はいらず、すべてデジカメでとれるので、「その他」の金額を使う必要はない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残った金額は、今年度の「物品費」と米国出張に使う予定である。
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