2015 Fiscal Year Research-status Report
核の初期化における胎盤特異的インプリント遺伝子の役割に関する研究
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26870036
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
千葉 初音 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80642719)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 遺伝子 / ゲノム / 発生・分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
ゲノムインプリンティングは哺乳類特有の現象であり、この機構によってアレル特異的発現を示す遺伝子をインプリント遺伝子と呼ぶ。進化的に哺乳類の胎盤の獲得とゲノムインプリンティング機構の確立には密接な関連があるとされ、インプリント遺伝子は胎盤形成において重要な役割を果たしていると考えられる。本研究では、現在同定されている100種類以上のインプリント遺伝子の中から、申請者らが過去に報告した10種類の胎盤特異的インプリント遺伝子のインプリント確立機構と、胎盤形成における役割を解析する。 昨年度までに既知の胎盤特異的インプリント遺伝子のアレル特異的発現パターンと、それらのエピジェネティック修飾(DNAメチル化、ヒストン修飾)を解析した。その結果、Gab1には母由来アレルのみがメチル化されるDMR(differentially methylated region)が存在したが、Ano1、Sfmbt2のプロモーター領域は両アレルとも低メチル化状態にあり、DMRの存在は確認できなかった。一方Gab1、Ano1、Sfmbt2はそれぞれアレル特異的ヒストン修飾が見られ、これらの胎盤特異的インプリントがDNAメチル化だけでなくヒストン修飾によって確立する可能性が示唆された。 本年度では胎盤におけるDNAメチル化非依存的なインプリントをより詳細に解析するため、新規メチル化酵素Dnmt3a/Dnmt3bノックアウトマウスを用い、ノックアウト卵由来の胚の遺伝子発現をRNA-seqによって網羅的に解析した。このノックアウトマウスは卵子形成過程においてDNAメチル化インプリントが確立しない。しかしノックアウト卵由来の胚はGab1、Sfmbt2のアレル特異的発現が維持されていた。この結果は胎盤のゲノムインプリンティング機構にDNAメチル化に依存しないメカニズムが存在する可能性をさらに強固なものとする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は新規メチル化酵素Dnmt3a/Dnmt3bノックアウトマウスを用い、ノックアウト卵由来の胚の遺伝子発現をRNA-seqによって網羅的に解析した。この結果ノックアウト卵由来の胚体外組織はGab1、Sfmbt2のアレル特異的発現が維持されていることが示され、胎盤のゲノムインプリンティング機構にDNAメチル化に依存しないメカニズムが存在する可能性をさらに強固なものとする知見が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はGab1のDMR の配列解析から、胎盤のDNAメチル化依存的なインプリント確立機構についてさらに詳細な調査を行い、胎盤特異的ゲノムインプリンティングのDNA依存的・非依存的機構の双方について包括的に解析する。また体細胞クローンマウスを用い、胎盤特異的インプリントの発現変動とそれらが体細胞クローンの胎盤形成にどのような影響を与えるのかについて解析する。
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