2014 Fiscal Year Research-status Report
移植肺機能不全に対する間葉系幹細胞を用いた細胞治療の基礎研究
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26870042
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
渡邉 龍秋 東北大学, 大学病院, 助手 (70636034)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 肺移植 / 臓器保存 / 細胞治療 / 間葉系幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
テキサス農工大学のProckop教授にヒトMSC、マウスMSCの供与を依頼し液体窒素で保存されて輸送された。1代目の培養細胞を16.7%FBS+83.3%αMEMで培養し2継代目をストックとして保存し、これを実験に用いた。培養は60cells/cm2という少細胞数で播種し、7-9日目に実験に使用した。mMSCはC57BL/6Jマウス骨髄由来の5継代培養細胞を供与され、これを10%FBS+10%ウマ血清+80%IMDMを用いて培養6継代目の培養細胞液体窒素で保存し、後日実験に使用することとした。 マウス肺移植モデルはカフテックニックを用いて作成した。マウスの体格は非常に小さく、組織も脆弱であるためも出る作成の準備にはラットも使用し、肺移植モデルの確率と基礎実験を行った。マウス肺移植術の手技は麻酔導入後人工呼吸器に接続したマウスの心肺ブロックを氷冷したLow potassium dextran肺保存液2mlを肺動脈より灌流後に摘出する。心肺ブロックは4℃で18時間保存し、左肺静脈、左肺動脈、左気管支へそれぞれ20G、24G、20Gの静脈留置針の外とうで作成したカフを装着し、コントロールマウスにおいては気管支または肺動脈よりPBSを投与、実験群においては気管支または肺動脈よりヒトMSC懸濁液を投与した。その後、レシピエントマウスに麻酔を導入し左肺移植を行った。 移植6時間後に気管支肺胞洗浄液を回収し、タンパク量、細胞数について定量を行い比較検討を行った。ヒトMSCの肺動脈、気管支どちらからの投与群においてもタンパク量はMSC投与群において低値を示し、サイトカイン量においても低値を示す傾向があったが、気管支からの投与法においてより有意な差異が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度のH26年度は間葉系間細胞の培養とマウス肺移植の実験手技の安定の確認と、間葉系間細胞の移植肺機能不全への効果の検討を予定した。そのうち、間葉系間細胞の培養においてはProckop教授より供与されたヒトMSCが安定して培養されることが確認できた。また、マウス肺移植も安定して施行できることが確認された。移植肺機能不全への効果については、気管支肺胞洗浄液中のタンパク濃度がヒトMSC投与群において低値を示し、ヒトMSCが移植肺機能不全の予防に対しても効果を示すことが予想され、初年度としては順調に進展していると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
マウスを用いた肺移植法、およびヒトMSCの培養法については確立したと考えられる。今後は移植肺グラフトの機能評価が必要である。また、H26年度の研究結果から、肺動脈ではなく、気管支からの投与法の方が移植肺機能不全の予防効果が高い可能性が示唆されたため、肺動脈投与ではなく、気管支からの投与法について詳細な効果の検討を進めることとする。また、移植肺の機能評価についても再還流6時間後のみでなく、24時間後においても行う。 移植肺機能不全の病態は急性肺障害に類似した肺水腫である。血管透過性の亢進については気管支肺胞洗浄液中のタンパク濃度に加えEvans Blue dyeを用いて行う。肺移植2時間後、20時間後にレシピエントマウスへEvans blue 懸濁液を静脈投与する。Evans blue 投与4時間後にレシピエントマウスを安楽死させ、肺をPBSで灌流した後に-84℃で保存する。後日ホルムアルデヒド中でホモジェナイズし540nmで吸光度を測定し移植肺中のEvans Blue dye 量を比較する。また、マウス肺の生理学的な機能評価のため、移植後6時間、24時間後にレシピエントマウス右肺門を遮断したのち5分間100%酸素で換気を行い、動脈血ガス分析を行う。 組織学的評価としてレシピエントマウスを肺移植6時間または24時間後に安楽死させ、左肺をホルマリン固定 し、HE染色を行い肺傷害の比較検討を行う。また、ヒトMHCclassⅠ特異的抗体を用いてhMSCの免疫染色を行い、ヒトMSCの肺内での局在を検討する。antimouseneutrophil抗体、抗F4/80抗体等を用いて移植肺への好中球、マクロファージの浸潤を比較・検討する。これらの結果を国内外の学会で発表、海外の専門誌に投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度は実験用物品を中心に予算を使用した。予算についてはほぼ全額使用し152円が翌年度分として繰り越された。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H27年度は実験用のマウスを中心に物品を購入する。その他、Beadsを用いたサイトカインアッセイキット、Bioplex を用いた気管支肺胞洗浄液中のサイトカイン量の定量や、マクロファージ、好中球、ヒトMSCに対する抗体を用いた組織学的評価を行う。これらの成果は国内外の学会で発表をするため旅費の支出も必要となる。成果を国際誌に投稿するため、英文校正と投稿のための費用も必要となる。
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