2014 Fiscal Year Research-status Report
異質性受容を可能にする思想と環境の要件─秋田県仙北市における事例調査研究─
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26870061
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
牲川 波都季 関西学院大学, 総合政策学部, 准教授 (30339733)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 異質性の受容 / 言語教育 / グリーンツーリズム / 複言語・複文化主義 / 秋田県仙北市 |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年度は,本研究の実施内容の第一段階である,グリーンツーリズム(=GT)運営農家へ聞き取り調査を行った。この調査によって,異質な他者を自然かつ双方が満足する形で受け入れるという農業体験が可能になるまでに,いかなる思想をどのような経緯で構築してきたのかを,一人ひとりの個人史から跡付けることをめざした。
具体的には2014年8月10日,11日の二日間,仙北市西木町でGTを営む6農家を訪問し,1軒につき90分程度,合計11名に聞き取り調査を実施した。具体的には,GTを始めるに至るまでに,どこでどのような教育経験や就労経験を経てきたのかについて尋ねた。今年度は,聞き取りの録音データの大半を,現地出身の秋田大学学生の協力を得て文字化することができた。当初は,この文字化資料の考察までを予定していたが,12月から2015年3月まで産前産後の臨時休暇を取得したため,詳細な考察については次年度に行うこととする。
また,8月9日,12日には,たざわ湖芸術村内の民族芸術研究所,仙北市田沢湖図書館郷土資料館,仙北市学習資料館にて,演劇集団わらび座および仙北市地域の文献資料を閲覧した。資料に関しては,短時間の滞在だったためどのような資料があるのかの確認にとどまった。他方,民族芸術研究所では,所長より,わらび座が秋田に定住するようになった初期の様子を聞くことができ,また研究所の閉架書庫内にわらび座の定期刊行物などの豊富な資料があることを確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2014年度の研究実施目標は,調査I:GT運営農家を対象とした他者受容の思想群と個人史についての聞き取り調査のすべてと,調査II:他者受容を可能にする秋田県仙北市の地域史についての文献および聞き取り調査の一部,であった。
調査Iに関しては1回の聞き取り調査を実施し,外国語学習や外国文化の経験の有無,他地域への移動経験を確認することができた。詳細な分析は今後の課題であるが,2013年度に実施した1軒・2名の農家に対する予備的な聞き取り調査も含め,GTを運営する夫妻・親子のうち,男性(夫)および女性のうちの若年世代は,予想以上に県外あるいは海外への移動経験を豊富にもってきたこと,逆に,女性で50代以上の世代は,現在住地付近で教育を受け就労してきた場合が多いこと,が示唆された。ただしこうした示唆は得られたものの,現時点では,移動経験の事実確認にとどまった。こうした移動経験と異質性受け入れを可能にする思想群との関係を明らかにするためには,移動経験についての思いなどを聞き取る必要があるが,今年度は後半に産前産後の臨時休暇を取得したため,2回目の聞き取り調査は実施できなかった。
調査IIに関しては,仙北市内にどのような文献資料が残っているかを確認することができた。ただし今年度末に予定していた資料の収集と分析,また現地の事情に詳しい研究者からの専門的知識教授に関しては,上記の理由で実施することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
調査IのGT運営農家を対象とした他者受容の思想群と個人史についての聞き取り調査に関しては,2015年度前半に,1回目の聞き取り調査結果を分析し,後半にその分析結果に基づく2回目の聞き取り調査を実施する。特に着目すべきは,県外・海外への移動経験の多くない世代の女性たちが,GTを積極的に開始し担ってきたという点である。現在地から遠方に居住したことのない人々が,なぜ留学生などの異質な他者受け入れに積極的なのかという視点から聞き取りを継続する。
調査IIの他者受容を可能にする秋田県仙北市の地域史についての文献および聞き取り調査に関しては,2015年度中盤以降に文献の資料収集・分析を進めたい。2014年度に確認した仙北市内に加え,秋田県立図書館収蔵マイクロ資料の調査を予定している。また秋田県内の農村文化に詳しい研究者を訪問する。
調査IIIの『他者受容を可能にする農村コミュニティの思想』刊行による個人史と地域史の統合に関しては,上記理由により,現在の研究予定期間での実施は難しいと予想されるため,研究期間延長を申請する予定である。
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Causes of Carryover |
2014年4月に秋田大学から関西学院大学に異動し,現地訪問調査を頻繁に行くことが難しくなった。また,2014年10月末から3月初めまで産前産後の臨時休業を取得するなどしたため,当初「研究実績の概要」「現在までの達成度」で述べた内容に加えて,調査地に再度訪問しての2回目の聞き取り調査と文献収集,アルバイトによる文献資料整理,調査地に関する専門的知識の提供を受ける予定であったが,それらを今年度中に実施することができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年度前半に1回目の聞き取り調査結果を考察した上で,後半の長期休暇期間に1週間程度,調査地を訪問し,GT運営農家に対する2回目の聞き取り調査,わらび座など関係者に対する聞き取り調査を行う。同時に,たざわ湖芸術村内の民族芸術研究所,仙北市田沢湖図書館郷土資料館,秋田県立図書館で文献資料の収集と,現地在住の農村社会学者から仙北市の歴史文化について専門的知識の提供を受ける(国内旅費,設備備品費:文献資料代,謝金・人件費:専門的知識の提供,消耗品費:記録用SDカード,その他:資料コピー代)。その後,聞き取り調査結果を秋田大学生などの協力を得て文字化するとともに,文献資料についてアルバイトとともに整理する(謝金・人件費)。書籍などによる成果報告については,「産前産後の休暇取得に伴う補助事業期間の延長」を申請し,2016年度に行う予定である(その他:最終刊行物の印刷費・送付料)。
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Research Products
(3 results)
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[Presentation] Language education in Japan: Current state, challenges, and future directions2014
Author(s)
Kubota, R., Segawa, H., Mizuguchi, K., Shima, C., & Oda, M.
Organizer
International Society for Language Studies
Place of Presentation
国際教養大学(秋田県・秋田市)
Year and Date
2014-06-13
Invited
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