2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26870070
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
藪崎 志穂 福島大学, 共生システム理工学類, 客員准教授 (60447232)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 福島県北部沿岸域 / 湧水 / 地下水 / 水質 / 安定同位体 / 地下水流動 / 滞留時間 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26~27年度にかけて,福島県北部沿岸域に分布する湧水や地下水を対象として調査,分析を行った結果,以下の事柄が明らかとなった。 (1)地下水や湧水のEC(電気伝導率)は津波の浸水被害を受けた地域を含む大部分の地点で10~20 mS/mの範囲にあり,海水浸水による影響は殆ど残っていないことが示された。(2)水質組成ではCa-HCO3型が多く分布しているが,Na-HCO3型やNa-Cl型,Ca-SO4型の水質組成を示す地点も確認され,場所によって様々な水質組成をもつことが明らかとなった。また,南相馬市沿岸域の地下水や地面下から湧出する湧水でNa-HCO3型の水質組成を示しており,こうした水は比較的長い滞留時間を持つことが想定される。(3)SiO2濃度は深い地下水や地面下から湧出する湧水では相対的に高い値を示しており,滞留時間が長いことが想定される。(4)酸素・水素安定同位体比は,地面下から湧出する湧水や深層地下水では相対的に低い値を示す傾向が認められ,こうした湧水や地下水は比較的標高の高い地域(阿武隈山地周辺)で涵養されており,沿岸に近い台地周辺で涵養された水よりも滞留時間は相対的に長いことが予想される。(5)トリチウム濃度の結果から,地下水や湧水の多くで10数年~30年程の滞留時間をもつ水であることが推定された。比較的滞留時間の長いと思われる湧水や地下水は,標高の高い阿武隈山地周辺で涵養された可能性が高いことが,現地調査や一般水質,酸素・水素安定同位体比の結果においても示唆されており,こうした涵養域から沿岸部の湧出域までの距離や透水係数を鑑みると,概ね妥当な値であると考えられる。 今後は,CFCsおよびSF6分析を利用して,地下水年代を求め,他の分析結果等を総合的に用いて,引き続き沿岸域の地下水流動の解明を試みる予定である。
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Research Products
(8 results)