2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26870079
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
藤田 健志 筑波大学, 数理物質系, 助教 (60603066)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 有機合成化学 / フッ素 / 遷移金属触媒 / フルオロアルケン |
Outline of Annual Research Achievements |
炭素-フッ素結合は、高い結合エネルギーを持つ安定な化学結合である。近年では、遷移金属による酸化的付加を利用した炭素-フッ素結合の切断法が報告されつつあるものの、不活性な炭素-フッ素結合を切断するには、一般に激しい反応条件が必要であった。一方、遷移金属によるβ-フッ素脱離は、不活性な炭素-フッ素結合でも穏和な反応条件下で切断できるものの、これまで有機合成化学にほとんど用いられてこなかった。本研究では、β-フッ素脱離を活用する含フッ素化合物の新規合成法を開発した。 触媒量の0価ニッケル存在下、2-トリフルオロメチル-1-アルケンに対しアルキンとトリエチルシランを作用させたところ、1,1-ジフルオロ-1,4-ジエンが高い収率で得られた。また、0価ニッケル触媒存在下、トリフルオロメチルアルケンに対しアルキン、ジボロン化合物、tert-ブトキシカリウム、およびフッ化マグネシウムを反応させたところ、[3+2]環化が触媒的に進行し、二つの炭素-フッ素結合の切断を伴って2-フルオロ-1,3-シクロペンタジエンが生成した。これらの反応では、ニッケル触媒によるβ-フッ素脱離を経由していることが反応機構研究によって指示された。このように、β-フッ素脱離を活用することで2-トリフルオロメチルアルケンとアルキンとの脱フッ素カップリングを達成し、さらに添加剤を変えるだけで二種類の含フッ素化合物の作り分けにも成功した。 一方、0価ニッケル触媒存在下、1,1-ジフルオロエチレンとアルキンとを反応させてトリエチルボランとリチウムイソプロポキシドから発生したボラートを添加したところ、多置換フルオロベンゼンが得られた。詳細な反応機構研究を行った結果、この反応はβ-フッ素脱離ではなくα-フッ素脱離を経由していることが分かった。したがって、遷移金属触媒によるフッ素脱離の新たな手法を開発することに成功した。
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