2014 Fiscal Year Research-status Report
メゾスコピック系における測定の反作用とトポロジカルな準粒子
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26870080
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
久保 敏弘 筑波大学, 数理物質系, 研究員 (00645286)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | Aharonov-Bohm効果 / メゾスコピック系 / 電子間相互作用 / 線形伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
以前までの研究では、量子ドットを含むAharonov-Bohm(AB)干渉計に、量子ドット電荷計を環境として結合させた場合に、AB干渉計における電子に対する位相緩和の物理的な起源を明らかにすることで、量子ポイントコンタクト電荷計との違いを調べた。昨年度は見方を逆にして、AB干渉計を環境と見なして、量子ドット電荷計における線形伝導に着目することで新しい物理現象を見出した。 通常のAB効果では、干渉計を通過する電子が直接AB磁束の影響を受けてAB位相を獲得することでその電気伝導特性がAB振動を示すことが良く知られている。今回我々が調べた系では、量子ドットを通過する電子は直接的にAB磁束の影響を受けておらず、電気伝導特性にAB振動が現れないように思われるが、AB干渉計に含まれる量子ドットとの間に静電的な結合があることで、AB干渉計の情報を間接的に取り込み、その結果としてAB干渉計との間に電子のやり取りが存在しないにも関わらず、電子間相互作用によって量子ドット電荷計における線形伝導にAB振動が現れることを示した。 特に、電子間相互作用が弱い領域では、電子間相互作用によって誘起されるAB振動の起源が量子ドット電荷計の電荷感受率であることを明らかにした。また、メゾスコピック系における電気伝導特性に現れるAB振動のvisibilityは、電極などの環境系との結合による位相緩和のために通常は1(100%)よりもかなり低い値を示す。しかし、我々が調べた電子間相互作用によって誘起されるAB効果では、相互作用が強い領域において、元のAB干渉計における線形伝導のvisibilityが数%とかなり低いにも関わらず、電子間相互作用によって誘起されたAB振動においては、電子-正孔対称点近傍においてvisibilityが1になることを示した。この物理的なメカニズムは今のところよく分かっていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究目的の1つである、アーベリアンなエニオンに対する測定の反作用を調べる際に、相互作用しているカイラルTomonaga-Luttinger液体のような系をいきなり扱わずに、まずは相互作用していない系での基本的な物理を調べておくことが重要であると判断し、これまでの研究で扱ってきた量子ドットを含むAB干渉計における議論を発展させた。その際、当初は全く予想していなかった非常に興味深い結果を得たことで、その物理的な解釈や起源を調べることに時間がかかり過ぎてしまったことが本研究が遅れている主な原因である。そのため、本来の研究計画で予定していた、充填率が奇数分母の分数量子ホールエッジ状態をカイラルTomonaga-Luttinger液体理論に基づいて記述し、その系が量子ドット電荷計と静電的に結合することで誘起される位相緩和を調べることが出来ず、現在は研究が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は、相互作用によって誘起されたAB効果の議論と並行して、Chern-Simons有効理論を用いてカイラルTomonaga-Luttinger液体を記述する方法の議論を研究協力者とともに進めてきたので、今年度はそこで得た知見を活かして、充填率が奇数分母の分数量子ホールエッジ状態をカイラルTomonaga-Luttinger液体理論に基づいて記述し、量子ドット電荷計と静電的に結合することで誘起される位相緩和を非平衡2次摂動理論により計算する。 位相緩和の物理的な起源を明らかにすることで、これまでに扱ってきた相互作用の無いAB干渉計と相互作用のあるカイラルTomonaga-Luttinger液体との間にどのような違いが生じるかを調べる。特に、カイラルTomonaga-Luttinger液体では後方散乱を伴わないために、これまでに調べてきた位相緩和とは異なるメカニズムが期待される。 非平衡2次摂動理論による計算が進み次第、研究協力者であるスイスのETHのIhn教授と連絡を取り、1度訪問して実際に実験をすることを念頭に置いた議論をする予定である。 また、並行して非アーベリアンなエニオンのエッジ状態を記述する有効理論の構築に向けて、アーベリアンなエニオンのエッジ状態に対する有効理論としてのChern-Simons理論の拡張を進める。
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Causes of Carryover |
研究が遅れているために、本来予定していた海外の研究協力者との打ち合わせのための出張が出来なかったことが大きな原因である。また、海外のアドバイザーを呼んでの議論も出来ず、予定していた謝金を支払うことが出来ていないために、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は、昨年度の研究成果を論文として出版し、研究成果を国際会議で発表するための旅費とする。また、研究を進展させ、今年度は海外から研究協力者を呼んで研究打合せをしたり、こちらから海外のアドバイザーのもとへ行くための旅費として使用する予定である。また、論文を1つでも多く出版して、その出版費用にあてるつもりである。
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Research Products
(3 results)