2014 Fiscal Year Research-status Report
在宅介護者の介護継続に必要とされるショートステイ-その整備による介護費抑制の算出
Project/Area Number |
26870084
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
森山 葉子 筑波大学, 医学医療系, 助教 (10642457)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 医療・福祉 / 在宅介護 / 緊急ショートステイ / 介護費用抑制の試算 / ヘルスケアマネジメント / サービスプロフィットチェーン |
Outline of Annual Research Achievements |
我々の事前の研究において、在宅介護者の2割超が緊急ショートステイを利用することができれば施設移行せず在宅介護を継続できると回答しており、これらの者が施設を利用した場合と在宅介護を行った際の1か月の介護費用の差額を抑制できる費用として試算し、学会発表を行った。A市において緊急ショートステイ利用により在宅介護者の施設移行を回避できた場合、1か月に約8400万円の介護費用を抑制し得る可能性があり、これはA市1か月の介護費用7億8千万円の約1割にあたることを示唆した。 また、26年度つくば市ニーズ調査において、緊急ショートステイ利用に関わる詳細な調査を実施した結果、緊急ショートステイの申請を断られた経験は全体の4.5%があると回答し、その理由としてほとんどが満床、次に少ないながらも病状や医療行為に対応できないことが挙げられ、緊急ショートステイ利用に関わる状況を詳細に把握した。 さらに、つくば市における計画策定委員会に出席し、毎回のニーズ調査において浮かび上がる緊急ショートステイの利用希望と利用しにくさ、事業としての整備の必要性について問いかけてきたところ、緊急ショートステイ利用システムの整備に向けた部門会を立ち上げ、よりよい活用に向けた事業整備を始めた。施設数および定員数としては一定程度確保されており、緊急ショートステイ利用希望者数に対して不足していることは考えにくく、むしろ利用システムの問題であることを認識できた。 以上のように、事前のニーズ調査から明らかとなった緊急ショートステイ利用希望について、今回の調査で詳細を把握し、さらにサービス利用時の抑制費用を算出し、アカデミアの視点から研究を進めた。また、実際に現場や行政との情報共有から、問題点を把握し、事業整備に向けた部会を立ち上げることができ、研究と現場との融合からよりよいサービス提供に向けたアクションを起こすことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は、26年度つくば市ニーズ調査の結果から、緊急ショートステイの利用数や利用に関わる詳細な状況を把握した上で、翌年度に行う予定としていた、緊急ショートステイを利用することで施設移行せずに在宅介護を継続できた際の抑制できる介護費用の試算を行い、学会発表を行った。 また、つくば市の計画策定委員会に出席し、毎回のニーズ調査からも明らかとなっていた緊急ショートステイ利用に対する高いニーズがあるにも関わらず、利用が進まない現状があり、利用促進のシステム整備の必要性を問いかけたことで、委員会の中に緊急ショートステイ利用システムの整備に向けた部門会を立ち上げることができ、よりよいサービス提供のための整備に向けた動きを実際に前進させることができた。 現場施設長のインタビュー等から、施設側の状況やサービス提供意向等の現場の現状把握をし、また行政の立場からの予算や市内の施設数や利用状況について情報共有もすることができ、緊急ショートステイを利用する上でのシステム的な問題点の把握を行った。大学と現場と行政が一体となって、緊急ショートステイ利用システム整備に向けた部門会を立ち上げるという大きな一歩を踏み出すことができ、大学がリードして整備に向けた働きかけを行ったことは、大学としての大きな成果であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に算出した介護費用抑制の試算に、緊急ショートステイ利用システム整備に要する費用および運営費等を加味し、より精査した試算を行う。そのために、既に緊急ショートステイサービス提供を事業として取り組んでいる自治体に、その手法や運営費等の調査、および緊急ショートステイを受け入れている事業所への状況調査を行う。ただし、つくば市において緊急ショートステイ利用や提供の現状把握をした結果、ベッド数は足りており、利用が進まない理由としては提供側と利用側の情報共有が適切に図られていないこと、および提供側からは利用者の情報不足がネックでること等が判明し、これらの解決にはさほど費用を要しないことがわかっている。これらの調査や分析を踏まえ、つくば市の計画策定委員会内に立ち上げた緊急ショートステイ利用促進の部門会を軸に、つくば市において緊急ショートステイ利用に向けた整備を行っていく。 また、ショートステイをはじめとするサービス利用実態や属性を把握し、要介護度別に必要なニーズを探り、さらにサービス利用実態による介護形態の違いや影響、療養状況について縦断的に把握することを目的に、介護給付費実態調査および国民生活基礎調査の個票データを申請し入手した。これらを用いて、ショートステイ利用者のその後の施設移行状況や要介護度の推移等を分析する。また、高齢者と同様にショートステイのニーズが高い障害者・児まで対象を広げた分析も予定している。 研究協力者:田宮菜奈子、阿部智一、佐藤幹也、杉山雄大、渡邊多永子、川村顕、野口晴子、高橋秀人、山本秀樹、陳礼美、柏木聖代、柏木公一、伊藤智子、小林廉毅、豊川智之、冨尾淳、中村文明、松本吉央、麻生英樹、泉田信行、菊池潤、須磨崎亮、柴山大賀、山海知子、宮園弥生、山岡祐衣、武田文、門間貴史、小林洋子
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Causes of Carryover |
当該年度中に出産をし、産休をとったため、当該期間は研究を進めたり研究費を利用することができなかったため。また、産前、産後を含め、出張をすることが難しく、予定していたインタビュー調査を実施することが困難であったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
26年度は途中に出産をし、外部へのインタビュー等が困難であったため、机上で行える試算や分析、またつくば市内での移動で行えるインタビューや状況把握を行ったが、次年度は、既に緊急ショートステイ事業を整備している自治体や、サービスを提供している事業所へのインタビューのための出張を再開し、より精査された試算を行う予定である。
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