2014 Fiscal Year Research-status Report
前14世紀の楔形文字文書、アマルナ書簡の言語記述のためのデジタルアーカイブ構築
Project/Area Number |
26870085
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
高橋 洋成 筑波大学, 人文社会系, 研究員 (90647702)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | アマルナ書簡 / 楔形文字資料 / 文献言語学 / デジタルアーカイブ / Text Encoding Initiative / Linked Open Data |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 人文学資料のデジタル化の国際標準であるText Encoding Initiative (TEI)に準拠したXMLタグセットを用いて、アマルナ書簡の粘土板データの作成を行った。具体的には約290個の粘土板について、楔形文字ハンドコピー資料や、テル・アビブ大学のSh. Izreel教授が公開しているローマ字転写テキスト(http://www.tau.ac.il/humanities/semitic/amarna.html)を参考にしながら、楔形文字情報とローマ字転写とをタグで結び付けたTEI/XMLデータを作成した。今後はこれらを基礎データとして言語分析を行い、言語情報タグを付与していく。
2. XMLでは表現しづらい「重なり合うデータ」を適切に扱う方法について調査を行った。第一の候補としてXMLデータの範囲選択を行う規格XPointer、第二の候補として資源の関係性を記述する規格Resource Description Framework (RDF)、第三の候補としてTEI-P5で導入されたスタンドオフ・マークアップが挙げられる。本研究では第二のRDFと、第三のスタンドオフ・マークアップの両者を採用し、互いに連携させる方法について2015年1月に日本情報処理学会「人文科学とコンピュータ研究会」第105回研究発表会で発表した。
3. RDFおよびスタンドオフ・マークアップによる「データのつながり」を手軽に視覚化して確認できるよう、ウェブブラウザ上のJavaScriptで動作するRDF/XML、RDF/Turtle、RDFa処理器を開発した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1. 文字情報および言語情報を埋め込むためのタグセットの開発については概ね達成した。しかし、楔形文字粘土板データの作成については、諸事情により予定していた大学院生の助力を得られず、データ作成に取りかかる時期も遅れた。以上の理由から生じた作業の遅れを取り戻すために、当初計画していた研究方法を若干変更した。具体的には、言語分析および言語情報タグの付与については保留しつつ、楔形文字情報にのみ着目し、文字情報タグを埋め込んだ粘土板データ約290個を一括で作成した。平成27年度はこれらの中から特徴的な言語で書かれた粘土板を25~50個を選んで、言語分析および言語情報タグを付与していく。この方法により、アマルナ書簡デジタル化の作業の遅れを取り戻すことができた。
2. 1に並行して楔形文字字典を作成するための楔形文字画像の切り出す計画であったが、現状では目標である約1800文字のうち100文字弱しか達成していない。これは(1)で触れた作業開始の時期の遅れに起因するものである。楔形文字画像の切り出し作業については、平成27年度に計画している粘土板データ作成の継続、ならびに汎用プラットフォームへの組み込み作業と並行して続けていく。
3. 2の楔形文字画像の切り出し作業以外では、平成27年度の計画を実施するのに必要な研究成果は概ねそろっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
1. 平成26年度に作成した基礎的な約290個のアマルナ書簡データの中から、著しい方言的特徴または言語的特徴を持つもの25~50個を選び、言語分析を行いながら言語情報タグを埋め込んでいく。見通しとしては、2週間に1つの書簡データを作成するペースとなる。また並行して、楔形文字画像の切り出し作業を継続する。約1800文字が対象となるため、1日に20文字ずつのペースで進め、8月までに作業を完了させる。
2. 筑波大学の和氣愛仁准教授が開発している「アノテーション付与型画像データベースのための汎用プラットフォーム」に対して、本研究で作成したデータを提供し、アマルナ書簡用のプラットフォームの構築を進める。この作業と関連して、データを広く共有・活用し、あるいは様々なアプリケーションとの連携を可能にするために Linked Open Data (LOD)についての情報収集を継続し、プラットフォームにも反映させていく。
3. 以上の成果を筑波一般言語学研究会の雑誌『一般言語学論叢』、および2015年12月に開催される「人文科学とコンピュータシンポジウム(じんもんこん2015)」で発表する。
|
Causes of Carryover |
購入を予定していた参考図書(M. Dietrich et al (eds.), The Cuneiform Alphabetic Texts from Ugarit (KTU: second, enlarged edition) Muenster: Ugarit-Verlag, 1995)の注文がキャンセルとなったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
楔形文字粘土板およびセム語の参考図書を購入する。
|
Research Products
(2 results)