2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26870088
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
前田 祐佳 筑波大学, システム情報系, 助教 (20650542)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 光電脈波計測 / 緑色光 |
Outline of Annual Research Achievements |
生活習慣病に起因する動脈硬化が引き起こす心疾患や脳卒中は我が国の死因の上位を占めており、その予防および疾患の早期発見は急務な課題である。しかしながら現在行われている脈波伝搬速度(PWV)による動脈硬化の評価方法は、体動時に脈波計測が困難になるため、日常生活中(家庭内)での計測には適していない。 これまでの研究により、緑色光による脈波計測によって家庭内での脈波伝搬速度計測が可能となることが示唆された。しかしながら緑色光による脈波計測は近年の著しい光デバイス技術の向上により可能となった手法であり,従来法の近赤外光に比べいまだ基礎的検討は不足している.そこで計測光の変更が脈波伝搬速度計測に与える影響,さらに血圧などの血行動態,血管壁の硬度に影響を与える自律神経系に着目し,検証を行った. 緑色光による脈波信号を用いた脈波伝搬速度計測の精度について検証した結果,従来の近赤外光同様の精度が得られることが明らかとなった.また脈波伝搬速度算出において従来法であるピーク検出と,提案手法である相互相関関数を比較した結果,緑色光・相互相関関数による手法が最も精度が良い結果となった. 自律神経系の機能評価は心拍数(脈拍数)変動の周波数スペクトル情報であるLF/HFが使用される.LF/HF評価では心拍変動が一般的に用いられているが,心電図の計測が困難な場合は脈拍変動を用いることも認められている.しかしながらこれまでの脈拍数計測は近赤外光によるものが多く,緑色光での知見は得られていない.そこで本年度の研究ではLF/HF変動時,つまり血行動態,血管壁の硬度が変化した際も従来の近赤外光同様の反応が緑色光による脈波で得られるか検証した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自立神経は血圧や呼吸数などの体内の特定の機能を調整している神経系であり,交感神経系と副交感神経系の二つに分けられる.自律神経系は体内や体外環境の変化に関する情報を用いて体内のプロセスを制御し(刺激(促進)時は主に交感神経系,抑制時は主に副交感神経系)身体を自動的(自律的)に機能させている.本研究の目的である動脈硬化評価は,血圧などの血行動態,血管壁の硬度に深く関連するものである. LF/HF変動時,つまり血行動態,血管壁の硬度が変化時の心拍変動・脈拍変動を比較した結果,従来法である心拍変動及び近赤外光による脈拍変動と緑色光による脈拍変動の相関係数はそれぞれ0.9以上であり,心拍変動及び近赤外光による脈拍変動と緑色光による脈拍変動から算出されるLF/HF値の誤差も5%以内であった.緑色光による脈波を用いて心電図及び近赤外光による脈波同様に自律神経が評価可能であることは,緑色光による脈波も従来法同様に血管動態の変化から影響を受けることを示しており,脈波より得られる血管動態変化情報は計測光による影響を受けないと考えられる. また脈波伝搬速度計測の精度について,従来の近赤外光による脈波と緑色光による脈波について検証した結果,緑色光による脈波の方が高精度であり,提案手法である相互相関法の効果も確認できた. 以上より緑色光による脈波も近赤外光同様に動脈硬化評価に応用可能であることが示され,また脈波伝搬速度計測の計測精度向上効果も確認された.これらの成果は本研究の達成に大きく寄与するものである.
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Strategy for Future Research Activity |
脈波伝搬速度計測の計測精度向上効果および自律神経機能評価に関する計測精度について検証したが,これらのパラメータは季節性変動を含むものである.例えば血圧は夏に下降し,冬に上昇するように,血管の硬度は季節によって変化する.そのため,動脈硬化の評価パラメータは個人間だけでなく,季節間にも影響を受けると考えられる.平成27年度は季節ごとの被験者の脈波伝搬速度を計測し、季節に関する動脈硬化評価のパラメータを検討する. また従来の脈波計測で用いる近赤外光は体動によってアーチファクトが重畳しているが緑色光ではアーチファクトの影響を軽減可能であることが明らかにされている.本研究は日常生活下での動脈硬化評価を最終的な目標としており,そのためには日常化で想定される体動へのロバスト性の検証が必要である. そこで体動時の脈波信号を緑色光および従来の近赤外光を用いて計測し,それらの信号より脈波伝搬速度を算出,精度評価を行う.被験者に与える体動はイスからの立ち上がりなどとする。 以上の通り,平成27年度は平成26年度に構築した脈波計測システムを使用し,主にデータ収集を行う.
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Causes of Carryover |
購入予定の計測機器について,予算に見合う物品を購入できなかったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
血圧計測に関する機器を購入予定.
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Research Products
(6 results)