2014 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子多型に基づいた膵癌薬物療法の効果・副作用発現を予測するアルゴリズムの開発
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26870099
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
佐藤 泰憲 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任准教授 (90536723)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 切除不能進行膵癌 / ファーマコゲノミクス / ゲノム網羅的関連解析 / 薬剤反応性遺伝子 / 生物統計手法 / 生存時間解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
切除不能進行膵癌を対象に第Ⅲ相多施設共同ランダム化比較試験GESTが実施され、GEST参加者のうち遺伝子解析の同意が得られた188名を対象に、自らの先行研究に基づく候補遺伝子解析及びゲノム網羅的解析を行った。先行研究で候補になった3つの薬物代謝酵素関連の遺伝子多型をGESTサンプルを用いて検証を行った。その結果、ゲムシタビン群でSLCO1B1の遺伝子多型AG + GGを有する被験者の生存期間中央値(MST)は6.7ヶ月、AAを有する患者のMSTは9.6ヶ月で有意差があった(HR = 3.75 [95% CI: 1.30 - 10.8], p = 0.008)。 一方、経口フッ化ピリミジン系抗悪性腫瘍剤(TS-1)群では、AG + GGを有する被験者のMSTは14.4ヶ月、 AAのMSTは10.7ヶ月で有意差はなかった(HR = 0.77 [95% CI: 0.33 - 1.81], p = 0.55)。同様に、ゲムシタビンとTS-1群の併用群では、AG+GGのMSTは15.9ヶ月, AAのMSTは10.8ヶ月で有意差はなかった(HR = 1.18 [95% CI: 0.46 - 3.00], p = 0.72)。したがって、SLCO1B1の多型は治療効果予測因子であり、SLCO1B1の多型がAGまたGGを有する患者は、塩酸ゲムシタビンよりも経口フッ化ピリミジン系抗悪性腫瘍剤を中心とした治療を行うと効果が期待できることからがわかった。 さらに、最新のSNPアレイ(Illlumina OmniExpress BeadChip、約73万個の遺伝子多型)を用いたゲノム網羅的解析を行った。全生存期間、腫瘍縮小効果や有害事象と遺伝子多型との関連解析をマンハッタンプロットなどでスクリーニングを実施し、それらのアウトカムと関連する候補遺伝子を同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究計画は、① 膵癌薬物療法の予後因子・効果予測因子の探索・同定を行う、② 膵癌の薬剤反応性遺伝子同定のための生物情報学及び生物統計手法の開発 である。 ①については、生命予後と遺伝子多型との関連を調べるために生存時間解析を行った。また、Cox回帰分析により治療法と遺伝子多型との交互作用を評価し、同定された多型を予後因子、効果予測因子の検討を行った。さらに、有害反応に影響を与える遺伝子多型を調べるために、ロジスティック回帰分析を行い、治療法と遺伝子多型との交互作用を評価した。結果を視覚化するために、全ゲノムのマンハッタンプロットを作成した。 ②については、ゲノム網羅的研究のデータ解析において、標本変動による偽陽性及び偽陰性を少なくするために、基準とする統計量と判定限界値の多くの組合せについて、生物統計学的考察と計算機シミュレーション実験を行った。
平成26年度の研究計画通りに進捗しており、研究成果が投稿論文にまとまっていることを鑑みるとおおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、膵癌の薬剤反応性遺伝子同定のための生物情報学及び生物統計手法の開発を行う。特に、複数の遺伝素因がどのように薬剤反応性に関与するか、遺伝子間相互作用かつ遺伝子-環境因子相互作用を検出する統計手法を開発する。 さらに、前年度の解析結果をもとに、遺伝子多型情報及び臨床情報から薬効強度及び有害反応を予測するための数理モデル・アルゴリズムを構築する。 本研究で同定した遺伝子多型やゲノム網羅的関連解析で選ばれた遺伝子に対して、機能解析などで検証することで、抗癌剤の応答性に影響を与える薬効強度関連遺伝子及び膵癌の予後因子が同定され、抗癌剤の効果や副作用を予測するバイオマーカーの開発に役立てられる。本研究では、機能解析まで実施できないことから、同定した遺伝子を公刊論文、またはデータベースに積極的に公開することで、予後不良群を規定する因子を解明するための基礎的情報を提供する。
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Causes of Carryover |
2014年7月より所属が医学部附属病院から医学研究院に異動になり、職位が特任准教授に変更になった。2014年8月当初、学内で外部資金を財源として雇用された特定雇用職員の出張が制限されていたため、海外出張費として計上していた旅費を使うことができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
外部資金を財源として雇用された特定雇用職員が科研費を利用して出張をすることができるようになったことから、2015年5月29日から6月2日までシカゴで開催される米国臨床腫瘍学会に参加し、その参加費用及び旅費として使用する。
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Research Products
(2 results)