2015 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子多型に基づいた膵癌薬物療法の効果・副作用発現を予測するアルゴリズムの開発
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26870099
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
佐藤 泰憲 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90536723)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 切除不能進行膵癌 / ゲノム網羅的解析 / ファーマコゲノミクス / 生存時間解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
切除不能進行膵癌の第Ⅲ相ランダム化比較試験(GEST)が実施され、GEST参加者から遺伝子解析の同意が得られた188名を対象に、最新のSNPアレイ(Illumina OmniExpress BeadChip 約73万個の遺伝子多型)を用いたゲノム網羅的関連解析を行った。主要評価項目である全生存期間と73万SNPsとの関連を調べた結果,3つのSNPsが同定された(p<10-7)。 これらのSNPsとその主な結果は, 第3染色体上のgenome SNP (rs1915948; CC[n=4]の生存期間中央値(MST)は3.7ヶ月, CT + TT [n=184] のMSTは10.4ヶ月, p=6.9X10-8), SPATA31E1のsynonymous SNP(rs12238266; CC[n=102]のMSTは12.2ヶ月, CT [n=74]のMSTは8.6ヶ月, TT [n=12]のMSTは21.4ヶ月, p=1.0X10-7), VITのintron SNP(rs721348; TT [n=9]のMSTは10.6ヶ月, CT+TT [n=179] のMSTは5.5ヶ月; p=1.0X10-7)であった。 Cox回帰分析で治療法と遺伝子多型の交互作用を評価したところ,これらのSNPsの交互作用は有意でなかったことから、予測因子ではなく予後因子としての機能を果たすと考えられた。 さらに、副次評価項目である無再発生存期間や腫瘍縮小効果と73万SNPsとの関連をCox回帰分析及びロジスティック回帰分析を用いて実施した。その結果、全生存期間と関連があった3つのSNPsはこれらの評価項目とは関連が見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の研究計画は、① 膵癌の薬剤反応性遺伝子同定のための生物情報学及び生物統計手法の開発 ② 膵癌薬物療法に対する効果及び安全性を予測するアルゴリズムを構築であった。 ①に関しては、複数の遺伝素因がどのように薬剤反応性に関与するか、遺伝子間相互作用かつ遺伝子-環境因子相互作用をCox回帰モデルに解析を行った。また、73万回の検定を実施することから、検定の多重性の問題に対処するため、近傍の遺伝子多型間の連鎖不平衡を考慮した多重性の調整法の検討を行い、シミュレーション実験により評価を行った。 ②に関しては、NCI CTCAEのグレード基準3以上の有害事象や血液毒性とSNPsとの関連解析を実施した。同定されたSNPを用いて、遺伝子多型情報及び臨床情報から有害反応を予測するための数理モデルを検討した。 平成27年度の研究計画通りに進捗しており、研究成果が投稿論文にまとまっていることを鑑みるとおおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、膵癌薬物療法に対する効果及び安全性を予測するアルゴリズムを構築を行う。本年度は、最終年度であることから、これまでの結果を総括し、研究結果をもとに、遺伝子多型情報及び臨床情報から薬効強度及び有害反応を予測するための数理モデル・アルゴリズムを構築し、ソフトウェアを開発する。さらに、開発した予測モデルを実臨床に利用し、モデルの予測精度の評価を行う。 本研究では、機能解析を実施することはできないことから、同定した遺伝子多型や予測モデルを公刊論文やデータベース等に積極的に公開することで、予後不良群を規定するバイオマーカの基礎的情報を提供する。
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Causes of Carryover |
研究成果を海外雑誌に投稿しており、その掲載料と別刷費用として研究費を計上していたが、2016年3月31日までに投稿論文が採択されなかったため、それらの予算を使うことができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在投稿中の論文は、本年度中には採択される見込みがあることから、本年度に論文掲載料と別刷費用として使用する。
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Research Products
(6 results)