2014 Fiscal Year Research-status Report
途上国における環境財の自発的供給-家計調査による分析-
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26870109
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
横尾 英史 独立行政法人国立環境研究所, 資源循環・廃棄物研究センター, 研究員 (80583327)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ごみ分別 / 家計調査 / フィールド調査 / 利他性 / ベトナム / 廃棄物管理 / 自発的供給 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度はベトナム・ハノイ市の家計を対象として資源ごみの分別行動に関するインタビュー調査を行った。資源ごみの分別行動は「最終処分されるごみの量を減らす」サービスという意味において、環境財の供給行動と捉えることができる。ハノイ市中心4地区を調査対象地域とし、700家計を調査対象家計として抽出した。家計の資源ごみの管理方法や基本属性についてインタビュー調査を行った。さらに、資源ごみ分別行動の心理的要因を抽出するための心理テストを実施した。ここでは、the Self-Report Altruism Scaleという利他性の尺度を採用した。この尺度を用いて家計の利他性の程度を定量化した。 この調査より、ハノイ市の家計は資源ごみを「分別している/していない」に分けられ、さらに、「分別している家計」は資源ごみを「売っている/あげている」に分けられることがわかった。この資源ごみ分別行動は、行政による分別義務化が普及していない地域での自発的な環境財の供給行動といえる。 得られたデータを用いて、(1)所得が高い家計ほど分別する傾向が低い、(2)利他性が高い家計ほど分別する傾向が高い、という仮説を検証した。回帰分析の結果、二つの仮説が共に支持された。加えて、サンプルを所得水準で分割した分析も行った。これにより、ハノイ市中心4地区の家計が資源ごみをどの程度分別していて、その行動がどのような経済的あるいは心理的要因によっているかを定量的に明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りに家計調査の準備を行い、調査の一部を延期することとしたが、主な調査を実施した。また得られたデータのクリーニング作業も完了した。加えて、データ分析を開始し、複数の分析結果をすでに得られている。以上を理由として、研究計画通りに進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、データ分析を行う。被説明変数を変更した場合や、サンプルを分割した分析を行うことで、分別行動の決定要因についてより深い理解を得ることを目的とする。さらに、これまで得られた結果の頑健性を試すために、代替的な計量経済学モデルを用いた回帰分析も行う。こうして得られた分析結果をもとに、論文を執筆すする。作成した論文をセミナーや学会で発表する予定である。
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Causes of Carryover |
平成26年度に研究代表者本人と研究補助員の現地調査3回を予定していたが、研究代表者の転職という事由の発生と家庭の事情のために1回しか渡航することができなかった。そのため、計上していた外国旅費と謝金が発生しなくなったことが次年度使用額が生じた主な理由である。なお、この計画変更に対処するために、調査の一部を延期することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度に縮小した調査の分を実施する。そのための外国旅費、調査委託、研究補助員への謝金に使用する。 また、研究計画通りにフォローアップ調査を現地で行う。加えて、学会発表の旅費と英文校正に使用する。
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