2014 Fiscal Year Research-status Report
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26870111
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三津間 康幸 東京大学, 総合文化研究科, 学術研究員 (00568280)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | バビロン天文日誌 / イラク / バビロン / 国際情報交換 / イギリス / 大英博物館 / 楔形文字 / アッカド語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主要資料は、古代イラクの都市バビロンで、アッカド語、楔形文字を用いて作成され、現在はイギリス、ロンドンの大英博物館に大部分が所蔵される粘土板文書『バビロン天文日誌』(以下たんに日誌と呼称)である。日誌には紀元前7世紀半ばから前1世紀半ばにかけての天文記録の他、天候、物価、河川の水位、地上における諸事件についての記述が豊富に含まれる。1996年までに刊行された3巻の刊本において、記録の日付がわかる日誌粘土板はほぼ刊行されたが、1000点以上の(多くは断片的な)粘土板が刊本未収録のまま残されており、本研究ではそれらの解読を主として行う。その過程において、関連資料の解読や既発表の粘土板の読み直し、日誌や関連資料に基づいた歴史学、書誌学的研究を行う。こうして我々の日誌および日誌作成の背景に関する知見を更新し、古代の科学活動の実態に肉薄する。 本年度は、平成26年6月21日に行われた第57回シュメール研究会及び平成26年7月30日に行われた第9回アッシリア学研究会において、大英博物館所蔵の日誌関連資料1点の解読結果を報告した。平成26年7月31日には京都大学花山天文台での研究会「天変地異と人間」で日誌の編集過程について報告し、本研究の見通しを述べた。平成26年8月には大英博物館を訪問し、未刊行の日誌粘土板や関連資料を調査した。平成26年10月26日には日本オリエント学会第56回大会で刊本未収録の日誌粘土板1点について報告した。平成27年3月27日には第10回アッシリア学研究会で既刊行の日誌粘土板1点の改訂版テクストを発表した。 このような報告に並行して刊本未収録の日誌粘土板断片の写真を精査した。既刊の粘土板の欠損部に、あるいは断片同士で接合するものを新たに発見することはできなかったものの、断片の幾つかについては写真を基にして模写を作成し、テクストを解読することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の主たる成果としては、刊本未収録の日誌粘土板断片の写真を精査し、既刊の粘土板の欠損部に、あるいは断片同士で接合するものを新たに発見することが期待されたが、残念ながら明確に接合するものを発見することはできなかった。しかし、精査した断片のいくつかについては写真をもとにして模写を作成し、記されたテクストを解読することができた。これは平成27年度以降の研究内容を一部先取りして実施したものであり、このような作業が行えたことから、本研究はおおむね順調に進展していると言える。また、4回の学会、研究会での報告を通じて、未公刊の日誌および日誌関連資料の解読、既刊の日誌の読み直しといった作業の成果を報告することができた。こういった面から見ても、本研究の進捗状況はおおむね順調と判断することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
粘土板断片の接合は、当該断片の解読の予備的作業において探索されるものであるが、接合する粘土板が発見されないことも多く、また解読の過程でテクストの内容が明らかになったために新たな接合が発見されるというケースもある。このような事情があるため、本研究では今後は粘土板の写真をもとにした模写の作成とテクストの解読という、第2年度以降の作業を予定通り実施し、その過程で適宜接合する粘土板断片があるかどうか判断していくことにする。
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Causes of Carryover |
今年度海外へ注文した書籍のうち1冊の到着が遅れ、年度内に手続きを完了することができなかった。またもう1冊の購入予定の書籍については刊行が延期となり、年度内に入手することができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の書籍2点がそれぞれ到着、刊行され次第、すみやかに必要な手続きを完了する予定である。
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