2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26870111
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三津間 康幸 東京大学, 総合文化研究科, 学術研究員 (00568280)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | バビロン天文日誌 / アルシャク朝 / アッカド語 / 楔形文字 / 粘土板 / 長老会 / セレウコス朝 / エサギル |
Outline of Annual Research Achievements |
アルシャク朝時代のアッカド語楔形文字文書『バビロン天文日誌』の未公刊粘土板1枚について、特に歴史的事件を記した部分の翻字、翻訳を行い、その中に「長老会」と呼ばれるギリシア系市民の組織への言及があることを明らかにし、他の資料と比較してその史料的意義を明らかにした論文を執筆し、査読を経て学術誌に掲載した。 また既刊行の『バビロン天文日誌』の編集過程を明らかにする英語論文を査読を経て学術誌に掲載した。その中には一部の日誌粘土板について、刊本では正しく読まれていなかった箇所、読まれずに見過ごされていた箇所の翻字、翻訳を載せた。また独立した論文として、既刊行の日誌粘土板-180Aのテクストの修正を報告する論考を学術誌に掲載した。 また2015年9月に行われた第11回アッシリア学研究会(於東洋英和女学院大学大学院六本木校舎)においては-375Aとして公刊されている日誌粘土板断片と同じ日誌に属する断片2点を翻字、翻訳し、-375Aとの関係、-375Aとの間でなお失われているテクストの推定も行った。 2016年3月に行われた12th Assyriological Work Shop(於東洋英和女学院大学大学院六本木校舎)においては、セレウコス朝時代に年代づけられると思われる日誌粘土板断片1点の翻字、翻訳、模写を公表し、その中にセレウコス朝のバビロン支配期末期の「アッカド(バビロニア)の将軍」アルダヤへの言及があること、またzazakkuと呼ばれる監督官の職にあるベール・ルームルなる人物も言及されていることを指摘し、これらの人物についての他の史料を挙げて、問題の粘土板での彼らの言及を歴史の文脈の中に位置づけて考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は学術論文3報、研究会での発表2回を通じて、未公刊の『バビロン天文日誌』粘土板の翻字、翻訳、模写の公表、既公刊の粘土板のテクストの修正などの作業を円滑に行うことができた。この点から、研究課題はおおむね順調に進捗しているということができる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は本年度の研究会で発表した、『バビロン天文日誌』未公刊資料の翻字、翻訳、模写、注釈を学術論文の形にまとめ、学術雑誌に投稿する。
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