2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26870111
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三津間 康幸 東京大学, 大学院総合文化研究科, 学術研究員 (00568280)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | バビロン天文日誌 / アルシャク朝 / アッカド語 / 楔形文字 / 粘土板 / 長老会 / セレウコス朝 / エサギル |
Outline of Annual Research Achievements |
セレウコス朝、アルシャク朝時代のアッカド語楔形文字文書『バビロン天文日誌』の既公刊、未公刊の粘土板から、セレウコス朝、アルシャク朝時代のバビロンで王などの「息災のため」に供物を捧げる儀式の諸事例を抜き出し、時代による儀式の変遷とその意義を検討する英語論文を学術誌に掲載した。 また新アッシリア時代からアルシャク朝時代の日誌からオーロラ様現象と見られるものの記述を抜き出し、それらがオーロラであるのか否かを自然科学者と共同で検討した英語論文を学術誌に掲載した。 また、アルシャク朝時代の未刊行日誌粘土板1枚について、特に歴史的事件を記した部分の翻字、翻訳を行い、その中に「長老会」と呼ばれるギリシア系市民の組織への言及があることを明らかにし、他の資料と比較してその史料的意義を明らかにした論文を英語に翻訳し、Brillより刊行予定の日誌に関する論文集に投稿した。 2016年8月には京都大学宇宙総合学研究ユニットの主宰する第7回宇宙学セミナーにおいて「バビロン天文日誌の世界」と題して講演し、日誌の概要、その天文学的な意義、今後の研究課題などを明らかにした。 また2016年9月に行われた第13回アッシリア学研究会(於東洋英和女学院大学大学院六本木校舎)においては、セレウコス朝時代に年代づけられると思われる日誌粘土板断片1点の翻字、翻訳、模写を作成し、その中にセレウコス朝のバビロン支配期末期の「アッカド (バビロニア) の将軍」アルダヤへの言及があること、またzazakkuと呼ばれる監督官の職にあるベール・ルームルなる人物も言及されていることを指摘し、これらの人物についての他の史料を挙げて、問題の粘土板での彼らの言及を歴史の文脈の中に位置づけて考察した。そしてこの報告内容に修正を加え、英文論文として学術誌に投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は刊行された学術論文2報、投稿中の学術論文2報、研究会での発表1回を通じて、既公刊、未公刊の『バビロン天文日誌』の内容に基づく研究や、未公刊の『バビロン天文日誌』粘土板の翻字、翻訳、模写の公表などの作業を円滑に行うことができた。この点から、研究課題はおおむね順調に進捗しているということができる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は引き続き『バビロン天文日誌』未公刊資料の翻字、翻訳、模写、注釈の作業を行い、それらを学術論文として発表する。
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