2014 Fiscal Year Research-status Report
高度好熱菌のタンパク質アシル化修飾による代謝制御機構に関する研究
Project/Area Number |
26870113
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 彩子 東京大学, 生物生産工学研究センター, 特任助教 (90633686)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | タンパク質翻訳後修飾 / 短鎖アシル化 / 代謝調節 / タンパク質アセチル化酵素 / Thermus thermophilus |
Outline of Annual Research Achievements |
①代謝酵素におけるアシル化修飾の機能解析 Thermus thermophilus HB27におけるアシル化修飾タンパク質の網羅的解析により修飾を受けるタンパク質として同定された、ロイシン生合成に関わる2-isopropylmalate synthase (IPMS)とTCAサイクルのisocitrate dehydrogenase (ICDH)に関して、アシル化修飾リジン残基に変異を導入し変異体解析を行った。その結果、IPMSやICDHのどちらも、アセチル化やスクシニル化を模倣した変異体において、その活性が低下するものがあった。このことから、IPMSやICDHにおいてアセチル化やスクシニル化による活性制御機構が存在することが示唆された。また、T. thermophilusが培地中の分岐鎖アミノ酸濃度や炭素源によって、総タンパク質のアシル化修飾傾向が変化することが分かった。そこで現在は細胞内の環境に応じたアシル化修飾による酵素活性調節を介した代謝制御機構に着目している。
②タンパク質アシル化酵素の機能解析 T. thermophilusには、タンパク質アシル化酵素(KAT)として機能すると考えられる候補タンパク質が10個存在する。これらがKATとして機能するかを明らかにするため、それぞれの破壊株を作製し、総タンパク質のアシル化修飾パターンを観察した。その結果、野生株において顕著にアセチル化されているタンパク質が、一つの破壊株においてアセチル化されていないことが分かった。このタンパク質の同定を行い、in vitroにおいてKATによってアセチル化されることやそのアセチル化部位をを決定し、また脱アセチル化酵素(KDAC)についても同定することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
代謝酵素におけるアシル化修飾の機能解析においては、着目した二つの酵素について、そのアシル化修飾部位における変異体解析を一通り終了することができ、これらの酵素がアシル化修飾によって活性制御を受けることを示唆するデータを得た。ICDHについては、その相互作用タンパク質の探索も行ったが、これまでにはそのようなタンパク質を見出せてはいない。 タンパク質アシル化酵素(KAT)に関する研究においては、T. thermophilusが持つ10個のKAT候補遺伝子の破壊株の作製を完了し、それらのアシル化修飾パターンの解析を行った。その結果、10のKAT候補のうち1つがKATとして働くことを示し、その基質タンパク質も同定できた。さらに、脱アセチル化を担う酵素も同定している。今後この可逆的なアセチル化を酵素依存的に受けるタンパク質の機能とアセチル化修飾の意義について明らかにしていくことで、新たなタンパク質アシル化修飾による酵素活性調節機構について明らかにできると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
①代謝酵素におけるアシル化修飾の機能解析 これまでに、IPMSやICDHについてアシル化修飾を模倣したいくつかの変異体において、その活性が低下することを示している。今後は、酵素学的解析や変異体や非天然アミノ酸導入タンパク質での結晶構造解析を用いることで、アシル化修飾による活性制御機構の詳細を明らかにする予定である。また、T. thermophilusが培地中のアミノ酸や炭素源に応じて、そのアシル化修飾パターンを変化させることから、IPMSやICDHの栄養状態に応じたアシル化修飾状態や、その状態での活性発現との関連について調べ、IPMSとICDHのアシル化修飾の生物学的意義を明らかにしていきたい。
②タンパク質アシル化酵素(KAT)の機能解析 T. thermophilusのもつ10のKAT候補タンパク質のうち、一つについてはその基質となるタンパク質の同定に成功した。このタンパク質がアセチル化修飾によってどのような活性調節を受けるかについて調べる予定である。また、今回破壊株のアシル化修飾パターンを観察した条件では、一種類の破壊株のみでその変化が見られた。炭素源等に応じてアシル化修飾パターンが変化することから、様々な培養条件にて破壊株の修飾パターンを観察することで、新たなKATや基質となるタンパク質が同定できると考えている。
|
Research Products
(6 results)