2014 Fiscal Year Research-status Report
癌微小環境におけるピリミジンとエネルギー代謝の関係
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26870119
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
稲岡 健ダニエル 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10623803)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 癌微小環境 / フマル酸呼吸 / ピリミジン生合成経路 / 新規薬剤標的 / ケミカルバイオロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では生化学、構造生物学、逆ケミカルバイオロジー及び分子生物学の手法を用いて癌微小環境においてフマル酸呼吸依存的なピリミジン生合成経路の分子機構を明らかにし、新規薬剤標的としての評価を行う。本研究計画では以下の5つの研究を行う。 ①阻害剤及びRNAiによるフマル酸呼吸依存的なピリミジン生合成経路の分子機構。26年度はフマル酸呼吸の最終産物であるコハク酸の高感度な新規定量方法を開発し、各種呼吸鎖阻害剤存在下におけるコハク酸の産生量を測定した。正常培養条件下では複合体IIの阻害剤でコハク酸の量が向上した。逆に、低酸素・低栄養条件下では複合体II阻害剤によりコハク酸の量が減少した。この結果は正常培養では複合体IIがコハク酸脱水素酵素として機能し、逆に低栄養・低酸素条件下では複合体IIはフマル酸還元酵素として機能するという直接的な証拠を得る事が出来た。②AF、LC、FL 誘導体の構造活性相関の解析及び絞り込み。当研究室が保有するAF誘導体約200種類を用いてヒトDHODHに対しスクリーニングを行い、IC50が100nM以下で阻害する化合物を約20種類見出し、その中でもIC50が10nM以下で阻害する化合物を3種類見出した。③ヒトDHODHとAF、LC 及びFL 誘導体との複合体構造。②で見出した最も強力にヒトDHODHを阻害するAF誘導体との複合体結晶構造を得る事が出来た。④ヒトDHODH阻害剤の、正常及び微小環境条件下での癌細胞増殖阻害効果。②で見出した強力な新規ヒトDHODH阻害剤を3種類を用いて低酸素・低栄養条件下における癌細胞の増殖をIC50が1μM以下で特異的に阻害する事が判った。⑤微小環境系の癌マウスモデルを用いたヒトDHODH阻害剤の効果。27年度はin vivo実験を行うためのAF、FL及びLC誘導体の絞り込みを行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
以下の理由で当初の計画以上に進展していると評価した。 ①本研究で最も困難と予想されていたコハク酸の定量法を新たに構築し、癌微小環境において複合体IIが逆反応を触媒し、フマル呼吸を用いて生存を可能にしている直接的な証拠が速い段階で得られた。 ②ヒトDHODHに対するIC50が4-6 nMのAF誘導体が3種類も見出す事が出来、その阻害強度は報告されている他のグループの阻害剤よりはるかに強力である事が判った。 ③ヒトDHODHに対する阻害強度と癌微小環境における細胞増殖阻害強度において高い相関が得られ、ヒトDHODHが癌微小環境では増殖に必須である証拠が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下の通りに研究を推進する。 1.阻害剤及びRNAiによるフマル酸呼吸依存的なピリミジン生合成経路の分子機構。26年度に引き続き、27年度も呼吸鎖及びヒトDHODH阻害剤による微小環境によるコハク酸の定量を行う。さらに、同じ条件でピリミジンや生合成経路中間体の定量も試みる。 2.AF、LC、FL 誘導体の構造活性相関の解析及び絞り込み。26年度ではAF誘導体を中心に構造活性相関を行った。本年度ではFL及びLCの構造活性相関を行っい、研究協力者である鳥取大学の斎本教授と連携し、より強力な誘導体の合成を試みる。 3.ヒトDHODHとAF、LC 及びFL 誘導体との複合体構造。引き続き(2.)で得られた化合物とヒトDHODHとの複合体結晶構造解析を行い、原子レベルで阻害機構を解明する。 4.ヒトDHODH阻害剤の、正常及び微小環境条件下での癌細胞増殖阻害効果。(2.)得られる新たなAF、LC 及びFL 誘導体を用いて癌微小環境における細胞増殖阻害効果を確認する。必要であれば、細胞取り込みの向上や安定性を改善した誘導体の設計・合成も行う。 5.微小環境系の癌マウスモデルを用いたヒトDHODH阻害剤の効果。AF、LC 及びFL 誘導体のin vitroでの結果に基づき、マウスモデルを用いた実験を行う。
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Research Products
(12 results)
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[Journal Article] Pharmacophore Modeling for Anti-Chagas Drug Design Using the Fragment Molecular Orbital Method2015
Author(s)
Ryunosuke Yoshino, Nobuaki Yasuo, Daniel Ken Inaoka, Yohsuke Hagiwara, Kazuki Ohno, Masaya Orita, Masayuki Inoue, Tomoo Shiba, Shigeharu Harada, Teruki Honma, Emmanuel Oluwadare Balogun, Josmar Rodrigues Da Rocha, Carlos Alberto Montanari, Kiyoshi Kita, Masakazu Sekijima
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Journal Title
PLoS One
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Structural Insights into the Molecular Design of Flutolanil Derivatives Targeted for Fumarate Respiration of Parasite Mitochondria2015
Author(s)
Daniel Ken Inaoka, Tomoo Shiba, Dan Sato, Emmanuel Oluwadare Balogun, Tsuyoshi Sasaki, Madoka Nagahama, Masatsugu Oda, Shigeru Matsuoka, Junko Ohmori, Teruki Honma, Masayuki Inoue, Shigeharu Harada, and Kiyoshi Kita
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Journal Title
International Journal of Molecular Sciences
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Presentation] Dissociation constant (Kd) of Trypanosoma brucei alternative oxidase inhibitors and their trypanocidal activity2015
Author(s)
Daniel Ken Inaoka, Tomoo Shiba, Tsuge Chiaki, Chou Rihe, Gen Takahashi, Satoshi Ueda, Yasutoshi Kido, Emmanuel Oluwadare Balogun, Kimitoshi Sakamoto, Takeshi Nara, Teruki Honma, Akiko Tanaka, Masayuki Inoue, Hiroyuki Saimoto, Anthony Moore, Shigeharu Harada, Kiyoshi Kita
Organizer
第84回日本寄生虫学会大会
Place of Presentation
杏林大学三鷹キャンパス
Year and Date
2015-03-21 – 2015-03-22
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