2016 Fiscal Year Annual Research Report
Evolution of eusociality mediated by the co-option of physiological mechanisms
Project/Area Number |
26870121
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡田 泰和 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (10638597)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 表現型可塑性 / カースト分化 / インスリン経路 / 休眠 / 社会性昆虫 |
Outline of Annual Research Achievements |
社会性昆虫の女王とワーカーによる繁殖分業は,特殊な現象と見られることもあるが,育児,採餌,繁殖という行動レパートリー(生活史段階)は単独性の動物にも存在し,こうした行動レパートリーを決める生理状態が個体ごとに“振り分けられる”ことで分業が実現しうる. こうした考えは,“繁殖グラウンドプラン仮説”(West-Eberhard 1996)として理論が提唱されたが,その分子生物学的実体はいまだ未解明である. 本研究ではトゲオオハリアリを用いて,脳内,卵巣および腹部脂肪体における生理活性物質や遺伝子の発現解析を行い,単独性の種における遺伝子機能がどのように使いまわされることで繁殖分業が成立するかを解明した.脳内物質の順位やカーストごとの定量化および,投与実験によって,本種では脳で作られるドーパミンが卵巣発達を促す神経ホルモン作用を持ち,女王や高順位個体で脳内濃度が上昇することを突き止めた.また,次世代シーケンサーを用いた比較トランスクリプトーム(網羅的な遺伝子発現解析)によって,インスリン経路や糖・脂質・アミノ酸の代謝に関わる経路がカースト間で大きく異なっていることを明らかにした.さらに,昆虫で休眠や栄養貯蔵を行う貯蔵タンパク(ヘキサメリン)がワーカー特異的に発現しており,これはワーカーの不妊化は単独性種の休眠状態を模した表現型としてもたらされていることを示唆している. 本研究は,トゲオオハリアリにおいて,順位によって休眠状態や栄養代謝にかかわる生理経路が活性化するか否かがカーストを決定づけていることを示しており,単独性の生理的性質の使い分けで繁殖分業の主要な部分を説明できた.
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Research Products
(8 results)