2014 Fiscal Year Research-status Report
婚姻法の法制史的考察によるイバード派イスラーム法学派の形成と展開の研究
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26870123
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
近藤 洋平 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (20634140)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | イスラム法 / 基礎法学 / 法制史 / 宗教学 / イバード派 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,イスラーム史の最初期に登場し,現在まで存続している少数派のイバード派を取り上げ,同派の法学派の形成と展開を,婚姻の成立と解消に関わる議論の考察を通じて究明することを目的としている。平成26年度は,イスラームの聖典クルアーンおよび預言者ムハンマドの言行録における,婚姻の成立と解消への言及に目を向けた。そして先行研究が明らかにするように,クルアーンやムハンマドの言行録では,婚姻の成立と解消に関する法規定は網羅的ではなく,ムスリム学者たちにとって解釈の余地のあるものであったことを確認した。続いて,イバード派と関係の深い,ハワーリジュ派諸派の見解を,スンナ派の分派学者たちによる著作物を利用して考察した。そして,婚姻の成立と解消に関するハワーリジュ派諸派の諸見解の中には,現代のイスラーム世界において広く受け入れられている法規定とともに,受け入れられていない,大きく逸脱する見解も含まれていることを明らかにした。 これらを踏まえ,西暦8世紀のイラク地方で活動したイバード派の学者たちの見解に目を向けた。そして彼らによる議論の中には,同時代のイスラーム世界から影響を受けたものがあることを確認した。これは,西暦8世紀のイバード派法学の実態に関わる興味深い点であるとともに,当時の学者たちの見解をまとめた著作物の真正性に関わる問題も含んでいる。そのため,西暦8世紀の学者たちの見解と,議論の形式について,より詳しく分析をする必要があることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2014年10月初旬に所属機関で行われた大規模な国際シンポジウムの準備・開催のために,7月から10月にかけて研究がいくらか停滞した。また2015年度からの所属機関の変更による引越しなどの準備作業のため,2月から3月末にかけて研究がいくらか停滞した。そして研究実績の概要で示したような成果が挙げられたものの,それらを発表,また発表する準備までは進められなかった。以上のことから,研究の達成度はやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
はじめに,平成26年度に引き続き,平成27年度も,西暦8世紀のイラク地方で活動したイバード派の見解について考察を進めていく。そしてその考察を通じて得られた知見をまとめたうえで,当初の研究計画に従って,イバード派法学の形成において重要な時期である,西暦9世紀および10世紀に活動した学者たちの,婚姻の成立と解消に関する議論に目を向けていく。
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Causes of Carryover |
次年度である平成27年度から,東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所への所属変更が内定し,同研究所の海外拠点の一つであるベイルートの中東研究日本センターへの長期出張が,本研究課題の遂行期間中に見込まれることになった。地理的要因から,同出張中には,イバード派信徒が暮らす中東諸国への複数回にわたる渡航も可能となるため,そのさいの旅費として,平成26年度計画分の旅費の支出を取りやめた次第である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
生じた次年度使用額は,長期出張先であるベイルートの中東研究日本センターにおける研究遂行に必要な図書などの運搬費に充てるほか,翌年度分として請求する助成金と合わせて,近隣の中東諸国への出張旅費に充てる。
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