2016 Fiscal Year Research-status Report
婚姻法の法制史的考察によるイバード派イスラーム法学派の形成と展開の研究
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26870123
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
近藤 洋平 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 研究員 (20634140)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 宗教学 / 基礎法学 / イスラーム / 家族法 / イバード派 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度に引き続いて西暦8世紀から10世紀の東方イバード派内における家族法の議論につき、アラビア語資料の読解を進めた。そしてそこから、東方イバード派内における法整備の状況が明らかになった。またあわせて、北アフリカの西方イバード派について、西暦9世紀から12世紀に執筆されたアラビア語資料に目を通した。 読解により、以下のことが明らかになった。すなわち、西暦9世紀のイバード派においては、先人からの見解を重視し、それに従おうとする立場と、新しい個人的見解を提示することを積極的におこなおうとする立場があった。そこではある法的事例において、当然のことながら見解の相違が生まれる。これについて東方イバード派の学者たちは、見解の多様性を受け入れ、自派の教義に反しない限りには、それも解釈の一つとして受け入れるという対応をとった。学者たちのこの姿勢は、スンナ派やシーア派などと同じく、豊かな法規則導出を支えることになったといえよう。 このほか、イバード派の各学者たちは、同時代の他宗派の学者の著作を参照し、気に入った見解があればそれを採用していたこと、場合によってはそれまでの見解を変え、別の見解を採用することもあったが、それは見解の放棄を意味するものではないとすることによって、意見の多様性を保持しようとしていたことがわかった。さらに、オマーンにはイラクから幾人かの移住者が来たが、移住者の見解は、そのまま受け入れられる場合もあれば、修正を受ける場合があったことも明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
西暦9世紀に活動した学者たちの見解が、使用しているアラビア語資料において、想定していたものよりも多くかつ詳細に記録されていることがわかり、その読解に当初の計画以上の時間を充てたため。
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Strategy for Future Research Activity |
事業期間を1年延長することによって、資料の読解と、それをまとめるための時間を確保した。また当該年度においては本研究課題について口頭発表をおこなったが、その際にはフルペーパーを準備した。発表のさいに得たコメントなどをもとに原稿を手直しして、学術誌に投稿する。そのほか、昨年度までの3年間の成果をまとめた論文を執筆する。
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Causes of Carryover |
当該年度は、主たる勤務先である海外事務所において、資料の読解に多くの時間を割いた。そのため、旅費や物品への支出が、当初計画していたものより少なくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究課題の成果報告としての学術論文において必要な文献を購入するほか、調査のために出国をする。また海外出張先などで購入した書籍を、「その他」経費を利用して運搬する。
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