2014 Fiscal Year Research-status Report
インフルエンザウイルス感染によるIgA分泌機構解明
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26870127
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山崎 達也 東京大学, 医科学研究所, 特任研究員 (50624087)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | IgA / インフルエンザウイルス / 並体結合マウス / 抗原 / CD4T細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
インフルエンザウイルス感染によって鼻粘膜上に誘導される特異的IgA抗体は、ウイルス感染そのものを防御する。よって感染によってどのようにウイルス特異的IgA抗体が誘導されるのかを理解することは、効果的なワクチン開発に不可欠である。本研究では並体結合マウス(外科的に2匹のマウスを結合させて血流を共有させたマウス)を用いた解析により、ウイルス感染によるIgA抗体応答の誘導メカニズムを明らかにすることを目的とした。 マウスに非致死量のインフルエンザウイルス(A/PR8)を感染させ、もう一方のマウスには炎症誘導物質(IL-1β、LPS、CTB+LPS)または抗原(HA)を投与した。同時にそれらマウスを並体結合し、結合から4週後に鼻腔洗浄液中のウイルス特異的なIgA抗体レベルをELISA法により測定した。その結果、抗原を投与した場合のみウイルス特異的なIgA抗体が並体結合マウス間で同レベル分泌されていた。よって特異的IgA抗体分泌には粘膜における抗原が重要であることが示唆された。 次に、感染マウス由来の免疫細胞と抗原(HA)投与マウス由来の免疫細胞のどちらが重要か確かめる実験を行った。感染マウスから脾細胞を採取し、γ線処理(免疫細胞が破壊された)マウスに移入した。さらに抗原を鼻粘膜に投与した。その結果、有意なレベルのIgA抗体が検出された。よってIgA抗体が分泌には、感染マウス由来の免疫細胞が重要であることが示唆された。 さらにどの免疫細胞が重要かを確かめる実験を行った。感染マウス脾細胞からB細胞、樹状細胞、CD4T細胞、CD8T細胞を精製し、B細胞とそれぞれの細胞を組み合わせてγ線処理マウスに移入し抗原を投与した。その結果、B細胞とCD4T細胞を移入した場合のみ有意にIgA抗体が検出された。よって、特異的IgA抗体分泌にはCD4T細胞が重要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の一番の目的は、IgA抗体分泌に重要な因子を見つけることであった。当初の計画通り、炎症誘導物質を検討したが有意な結果は得られなかった。しかし予想外に、抗原投与だけで有意なIgA抗体が検出された。このことからIgA抗体分泌には抗原が重要であることを明らかに出来た。またIgA抗体分泌に重要な細胞として、強力な抗原提示細胞である樹状細胞に注目していた。しかし予想外に樹状細胞ではなくCD4T細胞がIgA抗体分泌に重要であることが分かった。 以上の結果は、インフルエンザウイルス感染によるIgA分泌機構を明らかにするうえで大きな成果と考えらえる。よって本研究はおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.IgA抗体誘導に重要なケモカインXの同定と応用:当初の計画通りIgA抗体誘導に重要なケモカインX同定とそれを経鼻ワクチンに応用することを目指す。IgA抗体に重要な細胞はCD4T細胞であったので、文献からCD4T細胞に関連するケモカインを調べそれらがIgA抗体誘導に重要か確認する。具体的には、感染マウスから脾細胞を採取し、γ線処理マウスに移入し抗原(HA)を投与する。細胞移入からDay1, Day3, Day5, Day7, Day14で鼻腔粘膜もしくはNALTを回収し、組織中で上昇しているケモカインをリアルタイムPCRで解析する。有意に検出できたケモカインに関して、さらに定量ELISAで解析を行う。有意なケモカインを同定できたら経鼻ワクチンと併用し、アジュバントとして有効か検討する。 2.ヒトリンパ球での解析:これまでマウスで明らかにしてきたことを、ヒトの細胞でも同様の現象が起こるか解析する。具体的には健常人から末梢血を採取しヒトリンパ球を精製する。それを超免疫不全マウス(NOGマウス)に移入し抗原(ワクチン)を投与する。細胞移入から2週間後に鼻腔洗浄液を回収し、特異的なIgA抗体が誘導されるか解析を行う。すでに倫理委員会に実験計画書を提出しており、承認されている(承認番号:26-54-1009)。 3.自然免疫系との関連性:これまで明らかにしてきたことに関して、自然免疫系との関連性を解析する。具体的にはCRISPR-Cas9システムを用いて、Myd88ノックアウトBalb/cマウスを作製する。ノックアウトマウス作製のための材料や設備は整っている。Myd88ノックアウトマウスにインフルエンザウイルス(A/PR8)を感染させ、4週間後脾細胞を採取する。それを野生型マウスに移入し抗原を投与する。その2週間後、鼻腔洗浄液を回収し特異的IgA抗体レベルを解析する。
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